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カズくんのお母さんが帰ってきた
A、ばいばい！って言ったカズくんとバイバイして
リビングに入っていくと、お母さんが1人、
ソファで寝転んでる
「…おかえり」
「おかあさんただいま」
リビングにはお母さんだけ。
お父さんも、お兄ちゃんもいない。
いつもの光景だった。
「そこのパン食べてなさい。」
「わかった」
机の上のメロンパンを、一人でもぐもぐ食べる
「あと、…A、明日から和也くんのお母さんに帰りのお迎え頼んどいたから。送ってもらって。…ちゃんとお礼は言ってね」
.
それから、帰りはカズくんと、カズくんのお母さんと帰ることになった。
カズくんのお母さんと私のお母さんは学生時代、親友だったということ、
私の両親の関係が悪いことが噂になってて、お母さんとは少し疎遠になっていた、ということは
後々知った。
.
「Aちゃん、今日パンケーキ焼いたけどよかったらうちで食べてく？」
「いいの、！」
「もちろん」
.
「A、今日してたあやとりおれにもおしえて」
「えー、かずなりくん男の子なのに？」
「すぱいだーまんみたいでかっこいいだろ！」
「うーん」
「いいからあそぼ」
「わかった」
.
保育園のあとにカズくんちに遊びに行くことが増えた
家に帰っても家族は待ってない
お母さんが帰ってきて、夕飯ででてくるのは菓子パンか、コンビニのご飯ばかり
それが当たり前だった私にはカズくんのお家はとても暖かかった。
.
.
また少し時が経って
小学校に上がった時、
お母さんとお父さんが入学式に来た
ランドセルを背負って、「大きくなったな」っていうお父さんと「そうね」っていうお母さん
久しぶりに両親が揃って、とても嬉しかったのを覚えてる
「A、頑張れよ。…じゃあ、煙草吸ってくる。」
頭をぽんってして、煙草を持って歩いて行ったお父さん
お母さんが車を出した
「おとうさんまだきてないよ」
なんで？ていう私に、お母さんは
「もう、お父さんには会わないよ」って言った
私がお父さんと会った最後の日
もうお父さんの顔も覚えていない。
覚えているのはあの煙草の香りだけ
街を歩いてすれ違った人から煙草の香りがする度に、あの日を思い出す
「なんで？」と聞いても何も答えないお母さん
言えるわけがない。
まだ小学生の私に、
他の女と結婚するからよ。なんて
それから、私は煙草の香りが大嫌いになった
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作者名：さわ | 作成日時：2020年1月28日 18時
