第3章 乱藤四郎 3 ページ9
暫く私は何が起こったのかわからなかった。
唇に感じたもののことを考えていれば、柔らかい手が唇に触れた。
「乱藤四郎だよ。……ねぇ、僕と乱れたいの?」
という挨拶をされてしまった。
え、あ、私挨拶した方がいい?
あ、う、え!?
いきなりこんなことされるとは思っていなかった私にとって乱ちゃんの行動は予想外過ぎてついていけない。
「主さん聞いてる?」
「えっ、あ、はい!」
混乱してることがバレバレなのか、乱ちゃんは私の様子を見てクスクス笑う。
この子は本当に男の子なのだろうか。
少し服がボロボロなのがいただけないが、可愛らしい。
妹にほしい。
「替えの服とかって」
「あー……ないか、な」
乱ちゃんによると、前任審神者に全部捨てられていたらしい。
常にみすぼらしい格好で過ごさなきゃいけなかったのこと。
って言われてもねぇ……。
「なんか貸そうか?」
「え、でも」
「そんな格好じゃ歩けないでしょ?」
私がそう言えば、少し渋ったあと恐る恐る頷く。
くそ、可愛い。愛でたい。
こんな子が男なんて信じない。
なんて事を思いながら、私物から乱ちゃんに似合いそうな服を探す。
生憎、お洒落等に興味がない私が持ってるのは地味なものしかない。
持ってるなかで一番可愛いの……あ、これなら。
「乱ちゃんにこれ、あげる」
「え、いいの? こんなに可愛い服」
「いいよ」
優しく乱ちゃんの頭を撫でれば、乱ちゃんは嬉しそうに微笑む。
乱ちゃんが着替えたいということなので、後ろを向けば案外早く着替え終わったみたいで抱きつかれた。
なぜに。
「見てみてー! 似合う〜?」
「……うん、可愛い」
少しだけフリルのついた白いワンピースを着た乱ちゃんは、私に見せるためクルリと回る。
背中にある淡く薄い桃色のリボンが乱ちゃんの可愛いさを存分にアピールしていて、ニヤケが止まらなくなる。
渡して良かった。
「主さん、今度はボクがなにかあげるね!」
「え? 大丈夫だよ?」
「だーめ! あげる!」
「あ、はい」
こんなにも嬉しそうにはしゃぐ
私はゆっくりと立ち上がり、乱ちゃんを落ち着かせる。
「なにも食べてないでしょ? 何が食べたい?」
「え、え〜と………」
「なんでもいいのかな?」
「……うん!」
ここに来てからご飯を食べたことがないらしく、ご飯は任された。
とりあえず、ご飯を作るためにこんのすけを乱ちゃんの側に置きその場を離れた。
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作者名:月風鞘 | 作成日時:2017年11月20日 20時