第3章 乱藤四郎 ページ7
大和守安定を撒き、こんのすけと共に再び散策を始める。
散策というほど楽しいものではないが。
離れにいい感じの部屋を見つけて、ここを審神者部屋にすることにした。
埃まみれで掃除していませんと言ってるようなもんだった。
襖を開けただけで埃が舞い、噎せてしまう。
荷物置きにされていた部屋に入ると、くしゃみが止まらない。
持っていたハンカチで口元を押さえて荷物を少しだけ退かせば、赤みがかった金髪に目が入る。
埃と血の固まりで酷く汚れていて、今にも壊れそうな少年だった。
なんとか形を維持しているがこのまま放置していれば、壊れてしまう恐れがあった。
「ねぇ、こんのすけ。手入れ部屋って使えた?」
「……あのありさまだと厳しいかと」
先ほど此方へ来る途中に見た手入れ部屋は、ボロボロでクモの巣も張っていて正直はいって気持ちのいいものじゃない。
刀の手入れの仕方なら知っているが刀剣男士となると、どうやっていいのかがハッキリとはわからない。
「どうやってやればいい?」
「刀の手入れと同じようにやりながら審神者様の霊力を交えるのです」
こんのすけに言われた通りに手入れをしていけば、聞こえなかった呼吸がゆっくりと聞こえてきた。
手入れ部屋が使用できないため、手伝い札が使えない。
それでも丁寧に手入れをしていけば、少しずつ傷も塞がり汚れも少しはとれた。
「こ、こんな感じかな」
正直言って自信は無かったが、こんのすけから「お疲れ様です」と言われたためホッとした。
とりあえずこの
先にやれ? 黙りなさい。
布団に寝かせてやれば、ふっと小さく息を吐く音が聞こえて胸を撫で下ろす。
とりあえず持っていたハンカチを手で洗い、水に濡らして絞ったあと汚れがとれたら綺麗であろう前髪を退かし額にのせる。
「これで一段落……」
「お疲れ様です。何か欲しいものとかありますか?」
「生クリーム」
「ありません」
「あ、そうですか」
だったら言うなよとか心の底から思ったが、背筋を伸ばす。
重傷で抵抗する力もなかったからか、すぐに手入れが出来たものの他の刀ではどうなるかわからない。
先が思いやられる。
と、思っていると少年が目を覚ました。
「……ん、あれ……治って、る」
ゆっくりと体を起こした少年は、額にあったハンカチをどかして私を不思議そうに見つめた。
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作者名:月風鞘 | 作成日時:2017年11月20日 20時