続き ページ10
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「なぁ、もしあれなら病院紹介するから行けよ。ちゃんと冷静になれって、正気に戻れよ」
肩を掴まれて、今だに私を説得しようとしている。
こんな失礼な人だったっけ。
ああ、最初はその強引さに流されるように始まったんだった。
「もういい？しつこい」
余計な過去まで頭に浮かべて、言葉の通じない人から現実逃避していると、萱島さんがその手を振り払い、一蹴してくれた。
「あんた何？洗脳仲間？そんな奴がこいつの側にいても意味ないだろ」
「わかるよ。怖いよな、わけわかんねー説受け入れるのは。でもそれって自分の小ささ露呈してるだけだって気づけ、だせーから。それにもうあんたのじゃないんだわ、じゃ」
そう言い捨てると、そのまま振り返る余裕もないくらい早足で連れられて、やっとその場を離れられた。
「すいません。自分でなんとかしたかったのに」
「傷つくところに飛び込むことねーだろ。だから一緒にいるんだし。それにあんな奴にいくら言ってもわかるわけないよ。タイムスリップなんて馬鹿みたいな話」
「ドラえもんも、いないですからね」
「タイムマシンは電車でしたってね」
そんな冗談と乾いた笑いが、私達のデフォルトだった。
私達だって嘘だと思いたいんだ。
突然未来に飛ばされて、人類の終わりを知ったなんて。
「やっぱり救えるわけないですね。いくら言ったところで」
「救えないよ。俺たちがあがいたって、誰にも届くわけない」
みんなはどんな原動力で動いているんだろ。
救う救うと息巻いて、色々やってるみたいだったけど、頑張るだけ虚しくなるだけなのに。
「でも萱島さん、ヒーローでしたよ。さっき」
「この世界は救えなくても、こんくらいはやるよ。あいつムカつくし、今隣にいるのは一応俺だしね」
一応か、萱島さんらしい。
繋がれたままの手から、温もりが伝わり、荒んでしまった気持ちもなんとか保っていられた。
いつかその一応が取れる日はくるのかな。
もし奇跡が起きて、命が繋がれたその先に、そんな未来があればいいのに。
そんな自分都合な未来。期待したくないのに、勝手に夢見ている私がいる。
この先は何も見えない。
ただ確実にここにある、この手を逃さないように強く握った。
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終わり
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作者名：藍 | 作成日時：2023年9月21日 0時
