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本編80後半 また別の話 ページ9

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世間がまだ、消えた乗客を善か悪か判断出来ずに、ただ面白おかしく騒いでいた頃、

寝ても覚めても、不安定なままの私は、四六時中萱島さんと行動していた。


「A?」


え、この声って

振り向くとそこには、昔に振られた元彼の姿が。

いい記憶が一つも出てこない程、私の中では振り返りたくない過去の一つで、無意識に視線を外していた。


「誰?知ってる?」

「元、、カレです。前に話した」

「あぁ」


怪訝な顔で警戒している萱島さんは、私の一言でさらに眉間に皺が寄った。
確か、あの時も散々言ってたよな。

あちらも連れがいて、興味津々な様子で顔を覗かれた。


「もしかして、前言ってた元カノ?」

「あぁ一応」


一応って、
向こうも私にいいイメージなんて無いんだというのが、その言葉からわかった。


「可愛い子じゃん、もったいね。てかなんか見たことある気がするんだけど」

「もういいから行こーぜ」

「あ、あの消えた乗客じゃね?未来の!」


あぁ、最悪の展開。
今この時期に、その話題に触れられると、ろくな事にはならないのがわかる。
触れられたくなかったのか元カレさんは、複雑な表情になった。

萱島さんもこの先の展開を察したようで、手を取って歩き出そうとする。


「A!待って!」

「何?」


突然大きな声で呼び止められて、つい振り向いてしまった。
ああ、そのまま無視すれば良かったのに、、


「テレビとか雑誌で見たよ。俺たち良い別れ方では無かったけど、情はあるから言う。変な奴に洗脳されてんだろ?目を覚ませよ、そんなおかしな奴じゃ無かったじゃん」


思わずため息が漏れた。
自分の言い分が間違っているなんて、一つも疑っていないから、こうやって不躾な言葉を投げられるんだろう。

わかってる、こういう人に何を言っても無駄なのは。
あんなあり得ない現象、理解するのは容易なことしゃないから。


「どう思っててもいいし、馬鹿な元カノが変なのにひっかかったって思っててもいい。でも自分の命はどうするかちゃんと考えて、何を選ぶか、気をつけて下さい」


ぺこっと軽く頭を下げて、その場を離れようとする。
メンタル弱ってるわりに、よく頑張ったよ。
言い切ったもん、ちゃんと言えたよ。


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作者名: | 作成日時:2023年9月21日 0時

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