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「話かけたかったのに、いつも萱島さんといるから、こうするしかなくて。あなたに助けてもらった命なんで、やりたいように生きようと思って!」
「あ、あの、家まで来るのは流石に、もう帰ってください」
「僕の気持ちを全部伝えさせて下さい!ネットであなたの顔を見て、ビビッときたんです!そしたらこの世界の救世主で、感動して!」
うわうわ、熱がすごいんですけど、
咄嗟にポケットに入れたスマホを取り出すと、その手の手首辺りをいきなり掴まれた。
「離して下さい!」
「ただもっと会話したいんです!気持ちを聞いて下さい!」
「ちょっとやめてって!」
目に涙が浮かびはじめた。
ああ、もう悔しい!なんなのよ!
強くなったと思ったのに、こんな事で泣くなんて絶対嫌!
突然、掴まれていた感触がなくなり、顔を上げると、怖い顔をした萱島さんの姿があった。
「人んちで、何これ」
「いや、僕はAさんのファンで、それで」
「いいからとっとと帰れ、二度と来んな!」
急な怒鳴り声に驚いたのか、猛スピードでその男は姿を消した。
やばい泣きそう。
泣きたくない、あんな人のせいで泣くなんて、
頑張って堪えなきゃ。
「び、びっくりしたぁ。こんなところにまで来るような人、いるなんて、この世界どうなってんだか」
「下手な強がりだな。何かされた?大丈夫?」
力が抜けたように座り込んでいた私に、目線を合わせて萱島さんがしゃがんだ。
目の前に来た彼の顔は、ただ優しくて、純粋に心配してくれているのがわかった。
ほっとしたのか、涙が頬を伝っていく。
「手、掴まれただけ。大丈夫、私もう傷ついたりしないから」
「守るって言ったの、もう忘れた?」
頭をゆっくり引き寄せられ、萱島さんの肩に顔がつけられると、さらに涙が落ちていくのがわかった。
よかった、これなら見えないや、
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作者名:藍 | 作成日時:2023年9月21日 0時