その後1 ページ1
.
全てが何事もなく終わり、ただの日常のまま、運命の日は通り過ぎていった。
政府の作戦は大成功。
隕石の軌道は逸れ、作戦なんか知らない国民達は、人知れず命を長らえた。
でも余計なことに、政府は、ロケット発射は隠し切れないと踏んだのか、それともただ手柄を見せつけたかったのか、全てを公にし、私たちの証言が正しかったと発表してしまった。
そして英雄だ、神だと祭り上げられることになり、せっかく帰国したものの、また不自由な生活の逆戻りとなってしまっていた。
「Aさんですよね?国民全員の命を救うなんて、なんてすごい人なんだ!」
「Aさん!私たちの命を救ってくれてありがとうございました!私たちAさん推しなので、これからもずっと推し続けます!」
「握手してくれませんか?」
あー、やっぱり一人で出るんじゃなかった。
ちょっとコンビニに行った帰り道で、一応帽子は深く被っていたのに、気づかれてしまい、何人かが後をついてきながら、矢継ぎ早に好意が飛んできた。
「あぁ、すいません。急いでるので、すいませーん」
ぺこぺこと頭を下げながら、足早にその場を去る。
何とか巻けたようで、無事家に着くことができた。
家に入る際も、周囲を確認してから入るのが習慣付いてしまっている。
「はぁ、、」
玄関で深くため息をつく。
本当に、何してくれてんだ、政府様。
「でかいため息だな」
「軽く囲まれちゃって」
スイスから戻った後は、また萱島さんと暮らしていた。
今度はホテルなんかじゃなく、ちゃんとしたマンションで、言わば同棲中。
スイスでも一緒の部屋で過ごしていたから、そのままの流れで、今に至っている。
「気をつけろよ。なるべく一人で出歩くなっていつも言ってるし」
「ごめんなさい」
「今じゃ世間では時の人なんだから。『日本を救った未来からの使者!国民のヒーロー』なんて今日もワイドショーでやってたぞ」
「物好きが多いね、この世界は。さっきも女の子達が、推してますーって、これがアイドル気分?」
.
142人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍 | 作成日時:2023年9月21日 0時