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白浜さんの職場に向かうと、丁度外に出て来ている姿が見えた。


「分かったか、俺の言ってたことが、それでも声をあげる?」


いつもの調子で煽るように声をかけている萱島さん。
白浜さんはきっといつもみたいに、真っ向から真っ直ぐ否定してくれるはず。


「まぁ白浜さんは甘いから、またどうせさ」

「分かったよ。萱島さんの言うとおり、最低だな。もう終わればいい、こんな世界」


真っ直ぐ一途に信じる気持ちは強いけど、それが見えなくなると、途端に迷子になってしまう。
私はこの時が来るのが、どことなくわかっていたのかもしれない。

初めて見た白浜さんの、影がかった表情から目が離せなかった。


「そうだよな、クソだよな」


白浜さんの意見に同意する萱島さん。
そして左手で白浜さんの肩を触る。
その顔はとても苦しそうで、


「でもお前が言うな。お前が言うなよ」


ヒーローでいて欲しかったんだ。
確かに、何もかも腐っているこの世界で、彼は唯一の希望だった。

そんな彼が、すべて捨ててしまったら、もうこの世界に拠り所は無くなってしまう。


そうなってしまう恐怖が、言葉となって溢れ出てきた。


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作者名: | 作成日時:2023年8月20日 22時

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