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「こんなに取り合ってもらえないなんて、無力さを痛感してます」
「俺もです。でもなにもしなければ起きてしまう。それだけは避けなければならない」
「ですよね、、、」
またあの思い詰めた顔をしている。
白浜さんはいつだって一人で抱えこむから、心配になってしまう。
「このまま一緒に向かいますか？」
「あ、はい！」
加藤さん宅に何人かで集合している。
これからに向けて作戦会議といったところだ。
警察は信じてくれず、アテにできそうもないことをみんなに共有する。
もう私たちにできることが見当たらずに、沈黙に包まれた。
「小春ちゃん、どう？お腹の赤ちゃん」
「おかげさまで順調です」
「良かった。なんかほっとするね」
「小春と結婚する、父親になるって言ったら、どこまで心配かけんだって。結局普通に戻って欲しいだけなんだよ」
「普通なんて、続かないのに」
小春ちゃんの言うとおり。
もうすぐこの日常は終わる。
でも、私たちに何ができる？
「萱島さん？」
米澤くんが驚いた様子でタブレットをみんなに見せた。
そこには『消えた乗客の中に人気イケメン美容師が』と題されて萱島さんに関する様々な情報が並んでいた。
そしてページを進めると弟さんの過去も出てくる。
「ひどいよ、これ」
「萱島さん、大丈夫かな、、、」
忘れてた。
この世の中は情報に溢れていて、みんな日々多くの話題に触れている。
そしてその知りたいという欲はとめどなく溢れ、まるで子供のちゃんばらのように縦横無尽に振り回され続けてるんだ。
物珍しい私たちは消費される側にまわった。
見えない武器を誰もが振るえる時代。
言い知れぬ恐怖を感じる。
いてもたってもいられなくなった私は、ネットの記事に出ていた萱島さんの美容室に向かった。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
