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「すげぇ川あるじゃん!」


振り返ると、萱島さんの姿が。
危険を察知して来てくれたのかな、やっぱり優しい。


「それはさただの事故だろ、そりゃ後悔もあるけどさ、お前の仕事にはつきものの、業務上の事故だろ。いつまでもこんなとこに居座んなって」


萱島さんが素直に人を励ますなんて、なんか少し意外。
でもその励ましは彼に届かなかったようで、表情は今も沈んだまま。


「ただの事故じゃない」

「でも先輩も、白浜さんが思い詰めることを望んではないと思います。ここではみんな白浜さんに感謝してます。一生懸命引っ張ってくれて、優しくて真っ直ぐで、気持ちの拠り所っていうか、白浜さんはみんなの支えだと思います」

「違うよ、そういうんじゃ」


持っていた棒を投げ捨てる。
怒っている様子だった。


「俺は、そんな立派じゃないし、真っ直ぐでも何でもない、やめてくれよそういうの!」


そして白浜さんは静かに語り出した。


「あの日、俺は現場でミスを、先輩はそのまま入院して、俺の勝手な進入を報告しなかった。それをいいことに俺は何も言わなかった」


言わなかったことで、苦しくなることもある。
私はそれを知っている。
彼の話を聞いて、そんな過去の私が浮かんできた。


「結局俺は黙ったままで、先輩を助けることも出来ないで。な?俺はそんな立派じゃない。畑野さんの言うようなそんな男じゃない」


自分のしてしまった間違いの中、それを許すことが出来ずに、皆んなを引っ張ることで必死に立ち続けてきた。
清浄無垢な彼の弱さをみて、やっと近くに感じれたような気がした。

萱島さんが白浜さんの方に振り返るも、何か言いたげな顔をしながらまた後ろに向き直す。
その顔がなぜか印象に残って、


「皆んなそうです。私だって全然立派じゃないです」


そう言いながら白浜さんの痛々しい手に、絆創膏を貼る畑野先生。


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3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - 藍さん» いえいえ、こちらこそ迅速な対応をありがとうございます!占ツクライフ、楽しんでくださいね! (7月15日 20時) (レス) id: da35f6fb87 (このIDを非表示/違反報告)
3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - 失礼します…!実在する方を小説に出す場合はオ.リ.フ.ラを外した方が良いですよ!また、nmmn(実在する人物を題材にした二次創作)ではご本人様の目につかないよう、伏せ字や検索避け(長くなってしまうので、お手数ですが詳細はご自身でお調べください)などをしましょう! (7月15日 16時) (レス) id: 6196f83925 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年7月12日 11時

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