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「別に、お前が頑張らなくても、」

「もっと、役に立ちたい。そうじゃないと俺は、、」


思い詰めた表情に、その場にいた全員が心配した眼差しを向ける。

まるで、役に立たなければいけない呪いにでもかかっているんじゃないかと、誤解してしまうくらい、鬼気迫る何かを感じた。



電車の外のところで、他の方達と鳴子を作っていると、上機嫌で電車から出てくる玲奈さんがいた。


「萱島直哉に髪切ってもらったんだー案外腕良くて女子力復活ー!」


萱島さんに髪切ってもらったんだ。いいな、
寺崎さんがじゃあ私もなんて電車内に入って行った。

私は寺崎さんに続いて行ける程、鈍感じゃない。
あの日の彼の反応が全てを物語っている。
私はもう彼に甘える事はできない。

黙々と作業を続けた。


作業を終えて電車に戻ると、ちょうど畑野先生と入れ違いになった。

ハサミを片付けている萱島さんと目が合う。


「久しぶりの本業、楽しかったんじゃないですか?」

「言ってもタダですからねー使わないと腕も落ちるから丁度良かったけど」

「みんな喜んでましたね」


なるべくそちらを見ない様に、当たり障りのない会話をする。
彼の目は苦手だ。


「おたくは?いいの、髪」

「いや、わたしはそんな大したアレでもないですし、別に見た目なんてどうでもいいですから」

「人はいつだって綺麗な方がいい」


不意に髪先に感触を感じる。
振り返ると毛先をそっと触る彼と目が合う。


「俺の持論、毛先傷んでますよ」



こんなに複雑な気持ちで受けるヘアカットは初めて。

何か言わなきゃと思えば思うほど、何も出てこずただ沈黙が続くばかりで、


「みんなあんなに喜んでたんだから、きっと腕の良い美容師さんなんですね。萱島さんは」

「これしか無かったからな、好きなものは」

「好きこそ物の上手なれってやつですね」

「こんな場所じゃ意味ないけどね」


ここでは嬉しさや喜びも、素直に受け取れなくなってしまう。
ここが現代の私達の世界だったらって、いつも自然と比べているから、

顔は見えないけど、彼の声色にそんな虚しさを感じた。


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3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - 藍さん» いえいえ、こちらこそ迅速な対応をありがとうございます!占ツクライフ、楽しんでくださいね! (7月15日 20時) (レス) id: da35f6fb87 (このIDを非表示/違反報告)
3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - 失礼します…!実在する方を小説に出す場合はオ.リ.フ.ラを外した方が良いですよ!また、nmmn(実在する人物を題材にした二次創作)ではご本人様の目につかないよう、伏せ字や検索避け(長くなってしまうので、お手数ですが詳細はご自身でお調べください)などをしましょう! (7月15日 16時) (レス) id: 6196f83925 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年7月12日 11時

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