15 ページ15
・
・
「Aさ、黒尾となんかあったのか?」
先輩に任された段ボールを夜久くんと2人で空き教室に運ぼうと廊下を歩いているとそう聞かれて、思わず言葉に詰まった。
とうとう体育祭が明日に迫って空気は浮かれているのに、黒尾と私の間には薄く、でも確かな壁が出来てしまっていた。
きっと他の人には分からない、僅かな距離感だから、
誰も気づかないだろうと思っていた。なのに、
「……なんでそう思うの?」
「うーん…黒尾と話してる時Aの顔がなんとなく硬いんだよな。あと最近黒尾の元気とウザさがねえ!」
と胸を張って言い切った夜久くんに思わず噴き出す。
なんでそんな自信満々なの、と笑いつつ、気づかれるほどぎこちない表情になっていたのか、と反省。「なんで?」と聞かれて、
「なんでなんだろうね……」
ただ、話してる時にニヤッと顔を歪めたり、何も考えていない時にペン回ししてる、そんな姿を見ていたいだけなのに。
ただお互いのことを大切に思い合ってるのが伝わっている。そんな関係じゃ、黒尾は駄目なんだろうか。“お願い”。今まで見たことないくらい真面目な表情と言葉で。私、今の黒尾は何考えてるか分かんないの。
「あっ、えA、泣いてる!?」
「……………え?」
焦りを帯びた夜久くんの言葉に指で頰に触れると、涙が伝っているのに気づいて、「なんで私泣いてるの…」と思わず空き教室の前にうずくまる。
「やっくん、なーんでA泣かせてんの」
「あ、……黒尾」
突然黒尾の声がして、思わず身体が震えた。
足音が近くで止まって…ほら、いきなり現れてまた何考えてるかわからないの。
黒尾としっかり話せよ、な?と夜久くんに耳に囁かれたから小さく首を横に振ると、夜久くんは仕方なさそうに笑って私の肩を叩いて去っていく。
すれ違いざまに、「俺が泣かせたわけじゃねーからな!」と夜久くんに殴られた黒尾が、隣に座り込むのがわかった。
・
・
690人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒尾ファン - わああああああああかっこよすぎます!!もう大好きです。惚れましたこのような作品を作ってくださりありがとうございました感謝しかありませんこれからもがんばってください (3月26日 21時) (レス) @page26 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
氷咲@氷珀(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ずっと気になっていた作品でやっと読破したのですが、めちゃくちゃ癖に刺さりました!言葉のセンスとか、文体とか、会話の間から本人たちの温度の表現まで、コメ欄250文字では表せないくらい最高でした!完結おめでとうございます✿ (3月8日 12時) (レス) @page25 id: b0b4af51b9 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎話ずっと少女漫画を読んでるようなトキメキをくださる作品で、本当に大好きです…(泣)アナザー楽しみにしております、一先ずはお疲れ様でした…!! (3月7日 21時) (レス) @page25 id: a2759a36ff (このIDを非表示/違反報告)
坂崎(プロフ) - 執筆お疲れ様でした…!普段めったにコメントすることはないのですが、お話の運び方や表現の仕方がとっっっっても胸に刺さってもっと黒尾さんが好きになりました(;_;)本当にこの作品に出会えて良かったです…!次回作も楽しみにしております!🖤 (3月7日 18時) (レス) @page25 id: db3faabed6 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎話ドキドキしながら読んでいました💕 かっこいい黒尾さんをありがとうございます!アナザーストーリーも楽しみにしています✨ (3月7日 10時) (レス) @page25 id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:パルム | 作成日時:2024年2月16日 22時