桜前線 1【GO】 (ページ8)

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8　もはや城であるページ8

上質な門。その奥の噴水。停車しているリムジン。右手にあるテニスコート。広大な池に架けられた橋。庭も美しく整えられている。

「でっか」

どう見ても一般家庭の家じゃない。城だ。

「おかえりなさいませ。拓人ぼっちゃま」
「ただいま。こちらはAさん、俺の恩人なんだ。宿泊の用意をしてくれ」
「承知いたしました。では、Aお嬢様どうぞお入りください」

Aお嬢様？

「神童くん。泊めてもらうなんてそんな、申し訳ないよ」
「俺はAさんにお世話になりました。どうかお返しさせてくれませんか」
「本当にいいの？」
「もちろん」

お言葉に甘え、お世話になることにした。案内された先は想像を超えるものだった。まるで宮殿のような造りをしている。家の中にはエレガントな階段と柱。そして数々の絵画と、飾られた美しい花々。見たことのない圧倒的な光景に卒倒しそうだった。神童くん、こんな大きな家に住んでたのか。固定資産税高そう。驚くことに、土足で上がって良いらしい。それにも関わらず、床は汚れ一つもない。

「簡単に家の中を紹介させてください」

１階はリビングとダイニング。2階は両親の部屋と客室、そして彼の部屋。3階は物置となっているという。玄関から入ってすぐ右の部屋は応接室らしく、普段はあまり立ち入らないらしい。彼の部屋を見せてもらったところ、床の上には白い猫がいた。毛の艶が良い。ペルシャ猫かな。

「アリア、ここにいたのか。喉のあたりを撫でてやると喜ぶんです」
「ミャウー。ミャオー。」
「かわいいね」

部屋には立派なグランドピアノもある。それをじっと眺めていると、目の前で演奏してくれた。一音一音が繊細で、大胆だった。