桜前線 1【GO】 (ページ45)

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珍しく退勤の早い日だった。直行で家に帰って玄関の鍵を開けて入ると、その先は真っ暗だった。照明が点いていない。人の気配がない。パチリとスイッチを押して明かりを点ける。玄関にはサッカーボールがネットに入って掛けられていた。

「神童くん...？」

誰もいない家の中を歩き回る。机の上には渡したスペアキーが置かれていた。テレビは点けっぱなしで、小さい音量がスピーカーから流れている。

玄関の鍵は閉まっていたのに、スペアキーは机の上にある。スペアキーは持ち出されていない。ということは、神童くんは外出していない。それなのに家にいない。不思議なことが起きている。神童くんは、消えた？神童くんが家に戻ったということはあの世界で確かに確認した。一件落着というところかな。

ふとスマホを開く。全て消えていた連絡先は戻っている。職場の人間、大学の同級生、親戚、家族は復元されていた。しかし、雷門中サッカー部部員の連絡先は消えている。それは、まるで最初から存在していなかったかのように。

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