桜前線 1【GO】 (ページ43)

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43　選手としての道ページ43

ボールの軌道を目で追って、唖然とする浜野くんと天馬くん。

「すっげー！！必殺技じゃん！」
「あれってシュート技ですよね！さっき、ピアニシモって言ってませんでしたか！？」
「うん。どうかな」
「凄かったです！」
「ちゅーかマネージャーもいいけど、そのレベルだともう選手になった方がよくない？」
「ううん。私サッカーのこと全然わかってないし、皆の足引っ張るのはしたくないからやめとくよ」
「えぇえ！勿体ないですよ！」

ホーリーロードの緊迫感を一度味わうと、少なくとも選手として試合に出たいとは思わない。それに、次は全国大会だ。地区予選とは比べものにならない厳しい戦いになるだろう。サッカーの未来をかけた大事な戦いに水を差したくはない。

「でも、...いつか自分の実力を試したいとは思ってるんだ。だから、練習試合なら選手としてやってみたいかも」
「そっか。そんじゃ、それ監督に伝えとくよ！俺もそろそろ練習試合やりたいって思ってたんだ」
「うん。よろしく」

ここ最近は負けることが許されない戦いが続いている。そろそろ楽しくサッカーができる機会が欲しいと思うのは自然な流れだろう。

「やってみるとしたら、フォワードですか？」
「そこまではまだ考えてないなぁ。逆にどのポジションがいいと思う？」
「俺はフォワードがいいと思います！不意を突けるストライカーって貴重ですし！」
「俺キーパー派かも。佐倉って反射神経いいじゃん。その必殺技はパスに応用できると思うんだよね」
「なるほど...」

参考になる意見だ。ちょっと持ち帰って考えてみよう。
帰宅し、ピアノのレッスンを終えた神童くんに今日の出来事を話したところ、興味を示してくれた。

「フォルテシモの対となる技ですか、俺もそれは見てみたいです。練習試合については...そうですね。俺からも監督に相談してみます」

風向きが良い方向になったその日の晩。入浴中、唐突に頭痛が襲った。

「これってまさか。う、最悪...」

なにかを悟り、ジャクジーの縁に移動して腕を乗せる。タイミング悪すぎるって。気持ち悪くなってきた。吐きそ...。朦朧としてきて、立ち上がれない。飲酒後の入浴時の症状に近い。そのまま下に落ちるような感覚を覚えながら意識を失った。