桜前線 1【GO】 (ページ38)

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38　毎週水曜日のサッカーは特別ページ38

ヒロトさんと練習する毎週水曜日はサッカー部を欠席している。レッスンではなく、単にサッカーを一緒にするだけ。でも、ヒロトさんはすごく上手くて、適切にアドバイスをくれて、相手をしてもらっていると自然と上手くなる。だから、楽しい。趣味の一環のような雰囲気。

「ヒロトさんってー、どんなシュート打つんですか」
「見たいかい？」
「とても」

彼がにこりと笑う。突然動きが良くなった。ボールを高く上げ、力強く打つ。流れ星のようなシュートがゴールに突き刺さった。見ているだけでわかる、別格だと。もしこんなシュートが目の前に来たら絶対怖い。想像しただけでも頭を抱えて逃げ出しそう。

「こんな感じかな。でも、鈍ってるなあ」

圧倒的なシュートをさも当然のように打ったヒロトさんは振り向いた。どこが鈍っているというのか。これ以上にないすごいシュートだ。その時、背後からパチパチと拍手の音が聞こえてきた。

「緑川」
「流石だな。またその必殺技が見れるとは」
「見ていたのか。ちょっと恥ずかしいな」

照れたように頬を掻くヒロトさん。今現れたのは緑川という人なのか。たしかこの人は秘書で、ヒロトさんを引き摺って職場に戻していた人だった。

「緑川も久しぶりにサッカーしてみないか」
「俺はいいよ。見ているだけで十分」

ヒロトさんは私に視線を戻す。

「緑川も良いシュート打つんだ。アストロブレイクっていってね」
「俺の話はいいって。＿君、練習頑張ってるんだな。必殺技の完成を目指して頑張っていると聞いた」
「はい」
「"思う念力岩をも通す"。諦めずに頑張ってくれ」
「はい！」

ふと思い出したような素振りでヒロトさんは言った。

「そうだ。Aちゃんはサッカー部だったね」
「はい」
「もうすぐ狩屋マサキという子が入部すると思うんだ。天邪鬼だけど、悪い子じゃない。気にかけてくれたら嬉しいな」
「わかりました」

ヒロトさんからの頼みなら断る訳がない。狩屋マサキくんか。いつ入部するんだろ。