桜前線 1【GO】 (ページ33)

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必殺技のヒントが欲しい。そう思い、グラウンドの上からサッカー部の活動を眺めていた。天馬くんのドリブル技。雷門ゴールキーパーのキャッチ技。剣城くんのシュート技。霧野くんのディフェンス技が繰り出される。みんな、技って感じだ。迫力がある。でも、私が昨日経験した"あれ"には技らしさがない。あっけない感じがある。地味。でも、確かにボールはゴールに入っていた。

「危ない！」

突如猛スピードのボールが下から飛んできた。視界の中で、目の前のボールが急拡大していく。パッと両手でキャッチし、それをサッカー部の人に返す。申し訳なさそうに受け取ったのは、頭にゴーグルをつけた少年だった。この前倉間くんと一緒にいた人だ。同じクラスでもあるけど、名前が思い出せない。

「あ、転校生ちゃんだよね？ごめん。怪我なかった？」
「ううん、大丈夫」
「ちゅーか、反射神経すごいね！あんだけ速く反応できるって中々ないって！」
「あは。ありがとう」

学年に一人はいる、ドッジボールで避け続けて最後まで残る奴。それが私である。反射神経だけには自信がある。

「昨日も来てたよね。サッカー興味あるの？」
「そんなところ。必殺技が見たくてさ」
「おっ。そうなんだー。俺の必殺技も見てく？」
「えっ、見たい見たい！」
「じゃあ、相手になってよ」

ドリブル技を使うには相手が要るらしい。その相手役になった。突然彼の足下から波が現れた。まるで玉乗りのように横切っていく。自分はやられ役だが、意外と楽しい。

「おおー！！すごい！」
「ま、こんなもんよ」

得意げに笑う彼。この人の名前なんだっけ。やっぱり思い出せない。

「浜野くん。神童くんが呼んでいますよ」

浜野くんか。そう、そういう名前だった。その少年は手を上げて了承を伝えた。

「わかった！じゃーね、転校生ちゃん！」
「うん！」

雷門中サッカー部は、ずっと見ていたくなる魅力がある。みんな目がキラキラしていて、前を向いている。彼らといると新しい気づきがありそう。サッカーにもっと関わりたい。決意が固まる。ベンチにいた大人に話しかけ、見上げた。

「マネージャー希望です」

このサッカー部に関わりたい。本気でそう思った。