桜前線 1【GO】 (ページ4)

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4　影が落ちてページ4

休日は神童くんとショッピングに出かけた。近所をぶらりと歩いて家の周辺の道や施設を知ってもらうとともに、男物の服を購入した。もちろん神童くん用だ。サプライズで渡したサッカーボールを受け取った神童くんの顔には、ほんの少し、深い影が落ちていた。帰り道、二子玉川駅付近の河川敷を共に散策した時、懐かしそうな、切なそうな表情で遠くを見つめていた。

「似てる」

何に似てるんだろう。

「俺の住んでいた町にもあんな河川敷があるんです。そこで、よくサッカーをしていました」

神童くんはサッカーボールを地面に落とし、足に乗せたり、軽くリフティングをした。ボールの扱いには慣れているようで、キャプテンは伊達じゃない。まるでサッカーボールとダンスをしているような、そんな軽快さがあって目を惹かれた。

「Aさんっ、パス」
「わっ。え、ええと、普通に蹴ったらいいんだっけ」
「足の内側で蹴るといいですよ」
「こう？」
「ナイスです！」

サッカーに触れている間、神童くんは今まで見た中で一番楽しそうだった。本当にサッカーが好きなんだなと思った。そんな中、彼は胸の内を打ち明けた。

「サッカー部、辞めようか悩んでいるんです」
「...それはどうして？」
「このまま続けたら、きっとサッカーを本当に嫌いになる」

視線を落とし、複雑そうな表情を見せた。事情を聞いてみると、今の中学サッカー界では管理サッカーというものが蔓延しているという。勝敗指示を出されたり、自由なサッカーが禁じられたり。サッカー管理組織であるフィフスセクターに逆らうと、制裁を受けるという。そんな話、今まで聞いたことがない。でも、きっと現実に起こっているのだろう。彼の語りは現実味を帯びている。

「サッカーの成績は内申書に大きく影響します。俺はサッカー部のキャプテンとして、皆の人生を背負わなければいけない」

声が震えているのをふと隣で感じた。振り向くと、彼は静かに涙を流していた。

「俺は、...俺は。雷門のサッカーも、皆も守らなきゃいけない。それが重いんです」

サッカーが好きだからこそ悩んでいる。なんと言葉を返せば良いのかわからず、ただ寄り添って話を聴くことしかできなかった。