桜前線 1【GO】 (ページ23)

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23　初心者サッカーページ23

神童くんは今日もサッカー部で練習をしている。最近は家に帰ると、部屋に篭っている。何をしているのか気になりすぎる。ふと足元を見ると、一冊のメモ帳が落ちていた。タイトルは"戦術メモ"。パラパラとページを捲る。

"4-3-3が基本"
"4-1-2-3はサイド攻撃に弱い"
"ウィングはマルチタスク"

もし自分がもっとサッカーを知っていたら、このメモの内容も理解できるんだろうか。雷門中サッカー部のプレーをもっと理解できるんだろうか。神童くんの抱えているものがもっと理解できるんだろうか。

気づけばサッカーをしていた。サッカー初心者用の本を図書館で借りて、見よう見真似で取り組み、時間も忘れてサッカーを続けた。練習相手がいないので壁打ちをしようと思ったものの、全然違う方向にボールが飛んでいってしまって苦戦していた。その時、見知らぬ誰かから声をかけられた。

「君、シュートを打つ前はもっと足を踏み込んでごらん」
「えっ」
「こんな風に」

目の前で模範例が出された。綺麗なフォームだ。ずっと見ていられる。

「シュートは方向を定めてから打つんだよ」
「あの、あなたは一体...」
「ただの通りすがりさ。こんな遅くまで特訓かい？随分熱心なんだね」
「サッカーをやってみたくて。ただの...＿興味です」
「興味＿か。うん、いいんじゃないかな」

彼は微笑んだ。

「良かったら俺も君の練習に混ぜてくれないかな。こう見えてもサッカーは好きなんだ。シュートのフォームなら見てあげられるよ」
「え、いいんですか？是非お願いします」

とてもサッカーの上手い人だった。しかし、途中で彼の秘書を名乗る人が現れて、彼を強制的に連れて帰っていった。ずるずると引き摺られるようにして去った彼は申し訳なさそうにしていた。

「毎週のこの時間帯ならまた来れるから。またね」

教えてくれたお礼を伝えて、彼の後ろ姿を見届けた。少しの時間だったけど、あの人に教えてもらったお陰で飛躍的に成長した気がする。現に壁打ちがこんなにスムーズになった。当てたいところにシュートを当てやすくなった。

そういえば、あの人の名前聞いてなかったな。