桜前線 1【GO】 (ページ16)

今日:11 hit、昨日:4 hit、合計:3,994 hit

16　本当のサッカーを求めてページ16

河川敷に場所を移す。神童くんは厳しい表情をしてグラウンドに立っていた。その正面には茶髪天パくんとピカチュウくん。茶髪天パくんとピカチュウくんは必死にボールを繋げるも、あっさりと神童くんに取られてしまう。そして、フォルテシモが放たれた。その光景は自分にとって非常に衝撃的だった。AR画面のような非現実的な光景。凄まじいスピードで放たれたそれはゴールに突き刺さる。シュートを間近で見た茶髪天パくんとピカチュウくんは感動していた。神童くんは私に向けて言う。

「あれが俺の必殺技です」

そして神童くんは彼らに視線を戻し、表情をすっと切り替えた。

「これでいいだろ。...行きましょう、Aさん」
「うん」
「ありがとうございました！キャプテン、もし本当のサッカーができるようになったら、戻ってきてくれますか？」

神童くんは隣で俯き、わなわなと震えていた。彼はいきなり茶髪天パくんのボールを奪う。

「わかってないな...本当のサッカーなんてもうないんだ！！」

激しいサッカーが始まった。ガン、とサッカーゴールの角に強い威力でボールが跳ね返る。この場で感情的になっているのは神童くんだけだった。希望を諦めている神童くんと、希望に向かって一直線の後輩二人。対照的だ。激しいボールの奪い合いは、茶髪天パくんが神童くんのボールを取るまでしばらく続いた。

「このそよ風ステップで、俺、今年のホーリーロード戦えます！」

茶髪天パくんはキラキラした顔でそう言った。神童くんは複雑そうな表情をした。彼らに背を向けて、耐えられないような、なにか大きな感情が込み上げているような顔をしている。とうとう彼らを尻目に去っていった。後を追おうとすると、茶髪天パくんが声をかけてきた。

「先輩！さっきフォルテシモを見たいって言ってくれて、ありがとうございました。お陰で俺も見れました」
「どういたしまして。私も神童くんの技見れてよかった。君たちも引き続き頑張ってね」
「「はい！」」

ワンちゃんみたいな子たちだなあ。尻尾がぼんやりと見える。