必然的な出会い ページ9
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side.弟
初めて、Aちゃんに会ったのは随分前のこと。
兄者とおついちさんに連れられて居酒屋さんに行った時だった。
俺はもちろんお酒は飲めないけど、ご飯が美味しいと聞いていたから着いてきた。
「 ご注文、お伺いしますね。 」
3人で囲むテーブルの、一番通路側にいた俺は注文を聞きにきた女の子に一目惚れをしてしまった。
凛とした声に、あどけなさが残る可愛い顔立ち。
後ろで一つに結われた髪からはいい匂いがして、酒臭い店の中だってことを忘れそうだった。
「 …あ、ああえっとなんだっけおついちさん。 」
「 おい、しっかりしろよ。何のために通路側に座らせたと思ってんだよ。 」
兄者とおついちさんにツッコまれながら、俺はメニュー表を指さして注文を伝える。
俺たちのやり取りを見てか、それとも愛想笑いか。
口元を押さえ、控えめに笑った顔に俺はどきりとした。
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「 おい弟者お前さっきから、周り見て何ソワソワしてんだよ。 」
「 え、あ、いや。 」
「 さっきの店員さん、可愛かったもんね？ 」
「 ちょ、おついちさん違うって、 」
酔っ払い二人は、俺の反応を見てニヤニヤとしている。
呼んでやろうか？なんて揶揄う兄者を軽くあしらってテーブルに残ったご飯を急いで口に入れる。
どんな人なんだろう。
もう少し顔を見てみたい。
俺はそのことばかり考えて、二人が話している会話を聞き流していた。
その後、注文をし直すも彼女が出てくることはなくもう一度顔を見ることは叶わなかった。
大学生になったらここでバイトして博打だけど、彼女にもう一度会いたい。
偶然を必然にしたい。
俺はその一心で、大学入学早々ここの居酒屋に応募した。
初めてのバイトでやっていけるかという心配よりも、応募したはいいのに彼女がいないことの方が心配だった。
でも、運命ってやつはいつだって俺の味方をしてくれていた。
大学も同じだって気づいたのは、たまたまぶつかった人の近くに立っているAちゃんを見つけたとき。
その人と付き合っている？なんて気持ち悪いくらいに詮索しようと思っていたが、そんな邪念は彼女の一言で晴れた。
「 ！…実はその、違くて。勧誘断れなくて困ってて、あなたがぶつかってくれたからなんとかなったんです。 」
彼女の少し染まった頬に、いかんバイト中だとハッとして会話を続けた。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
