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「 A、お疲れ様。今日は週末の中でも格段に忙しかったな。 」
「 そうですね。 」
弟者くん来てくれて本当に助かったよ、と言ってパソコンと睨めっこする店長。
私は退勤するべくシフト表に勤務時間を記入して、大きなため息をつきたいのを我慢する。
スマホで時間を見てみれば、時刻は22時38分。
きっと彼はもう家に着いてるだろうな。
そう思いながら、店長に挨拶をして店を出た。
「 Aちゃん、お疲れ様！ 」
「 え！…弟者くん、なんでいるの？ 」
扉を開ければ、鼻を少し赤くした弟者くんの背中が見えた。
見ていたスマホを閉じて、私の方は向いた彼。
「 なんでって、Aちゃんのこと待ってたんだ。 」
へへ、と照れ笑いしつつ頭をかく仕草をする。癖なのだろうか、笑う時はいつもそうしてる。
私は空いた口が塞がらず、驚いた顔のまま固まってしまう。
「 どうして。私、別に一人で帰れるよ…。 」
「 え、あ…、もしかして迷惑だった？ 」
弟者くんは片眉を下げ、少し困ったような表情に変わってしまった。
私の悪い癖が出てしまった。
申し訳ない気持ちが強く、思ったことを口にしてしまいついハッとなる。
「 ！…迷惑じゃない。でも、私のせいで帰るの遅くなってるから申し訳なくて。 」
「 ちょ、そんな顔しないで。俺が勝手に待ってただけだから、ね？ 」
ほら、帰ろ。
そう言って弟者くんは強引に私の手を引いて歩き出した。
随分と冷たくなっている彼の手は、熱った私の体を一気に冷やしてくれるみたいだった。
手、大きいな。
なんて呑気なことを考えながら、帰路についた。
暫くの沈黙は、弟者くんの言葉で破られた。
「 …Aちゃんに会えるかなって思って、今日の交代引き受けたんだ。 」
「 え。 」
弟者くんに手を引かれたまま、私たちは絶妙な距離感で歩く。彼はまっすぐ前を向いていてどんな表情をしているかはわからない。
でもその優しい声色でそんなこと言われたら期待しちゃうじゃん。
「 …あ、ほら、LIMEとか交換してなかったじゃん？だから聞くタイミング作りたくて、ね？ 」
バイトまだまだわからないことあるしさ。
彼の言葉一つ一つに浮き沈みしつつある感情。そうだよね、同年代私たちしかいないし連絡先知っときたいよね。
私の体温が移った彼の手は温かくて、私の指先は既に冷え始めていた。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
