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あの日以来、事あるごとにシフトを眺めては弟者くんに会えないかと心のどこかで淡い期待に溺れていた。
今まで追っていた漫画もアニメも、雑誌も映画も全部上の空。
目の前に映るテレビもスマホも、私の心に届くことはなかった。
「 …会いたいな。 」
初めて会ったあの日以来二週間は経っていた。
学校でばったり会うこともなければ、シフトが被ることもなかった今日まで。
ふと口から出たのは、彼への純粋な気持ち。
今から準備しないと大学は間に合わないのに、ベッドに沈み込んでしまって全く動けなかった。
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「 お疲れ様です…ってあれ、なんで弟者くんいるの。 」
「 …！あ、実はパートさんが体調不良って聞いてシフト交代したんだよね。 」
大学帰りにそのままバイトへ来た。
キッチンに入ってみれば、久々に見た彼の顔。
思いもよらぬ形で会えたことに嬉しさを感じつつ、今日はほぼすっぴんでバイトに来てしまったため大きな後悔が押し寄せる。
「 そ、そうだったんだ。 」
「 あはは、久々に会ったね。元気そうで安心した。 」
「 ！…げ、元気だよ。弟者くんも変わりなさそうだね。 」
私は少しぶっきらぼうに言い放って、ホールと予約状況を確認しにレジの方へと向かった。
別に急いで走ってきた訳でもないのに、心臓がうるさい。
私は逃げるようにして弟者くんの前から去った。
「 …ねえ、お姉さん名前なんて言うの？俺たまに来るんだけど、いっつも可愛いと思ってたんだよねえ、 」
「 おいお前酔いすぎだろ。すんません。 」
「 あ、いえ。空いたお皿お下げしますね。 」
今日は週末だからか、予約外のお客さんも多くラストオーダー間際でも未だ満席状態だった。
そんな状況なので弟者くんと会話することなんかできなかった。
ああ、バイト終わりが待ち遠しくて仕方ないよ。
酔っ払いのお客さんを適当にあしらいつつ、キッチンへ戻る。
「 弟者くん、今日ヘルプで来てくれたし22時になったら上がっていいよ。 」
「 あ、本当ですか。じゃあお言葉に甘えて。 」
店長と弟者くんが会話しているのが聞こえた。
店締め作業があるので、きっと私は22時半じゃないと上がれない。
せっかく会えたのに、話せないじゃん。数分前に期待していた私がバカだったみたい。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
