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「 お疲れさま、初バイトどうだった？ 」
「 いやー、疲れるね。Aちゃんどのくらいの頻度で入ってるの？ 」
着替え終え、休憩室で話す私たち。いつもは賄いを食べさせてもらっているけど、弟者くんがいるから遠慮した。
少しだけ、もう少しだけ話したいからご飯のことは後回し。
「 多くても週3回かな？弟者くんはどのくらいで入るつもりなの？ 」
「 うーん、とりあえずはAちゃんと同じくらいで慣れたらもう少し増やそうかな。 」
まだ肌寒い春の夜は、とにかく風が冷たい。
帰る準備が整っている彼をこれ以上引き止めるわけにもいかず、私は自然な流れで会話を終わらせた。
「 店長、お疲れ様です。お先に失礼します。 」
「 お疲れさまです！明日からもよろしくお願いします。 」
隣で弟者くんはがばっと深いお辞儀をして、出口へ歩いて行った。礼儀正しい子だな、と思いつつ私も彼の後ろへついて歩いた。
「 Aちゃん、電車？ 」
「 うん。弟者くんは？ 」
「 自転車！暗いし行けるところまで送っていくよ。 」
「 え、わ、悪いよ。申し訳ない…。 」
本当は嬉しくてお言葉に甘えたいところだけど、そんな可愛いことができるはずもない。
最初に口から出たのは遠慮の気持ちだった。
でも弟者くんは、遠慮する私を気遣ってくれて駅まで送ってくれた。
はやそうな自転車を押しながら私の横を歩いてくれた弟者くん。
「 女の子一人じゃ危ないからね、何かあったら俺が嫌だからさ。 」
「 あ、ありがとう。 」
今日初めて会ったばかりの人になんでそんなに優しくできるの。
彼のことをもっと知りたいと思うのは、当然のことだ。
こんな言動されたら誰だってお近づきになりたいよ。
「 Aちゃんは、どこの学部？ 」
「 私は、経済だよ。弟者くんは？ 」
「 俺は国際文学！どうりで会わなかったわけだ。 」
「 うん？ 」
「 …そういえば俺の友達にも経済の人いたな。 」
あはは、と乾いた笑いをこぼして頭をかく弟者くん。
学部が同じだったら今日会えてたもんな、そう思いながら彼が同じバイト先に来てくれたことに奇跡を感じる。
いつもは長く感じる帰り道もあっという間に終わってしまう。
「 駅ついちゃったね。じゃあ、お疲れ様！また次のバイトの時にでも！ 」
そう言って元来た道を歩いて行った弟者くん。
彼の背中が見えなくなるまで私はその場から動けなかった。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
