縮まる距離 ページ16
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電車に乗ることなく歩いて帰ってきた私たち。
私の家に着く頃にはすっかり暗くなっていて、お腹も空いてきていた。
繋いだ手を離さないまま、家へ着けば弟者くんは静かに私を引き寄せ抱きしめた。
「 …弟者くん？ 」
「 ごめん、ずっとこうしたかった。 」
「 …。 」
ああ、体温で溶けそうだよ。
心地よくて目を瞑る。彼の胸に体を預ければ、心臓の音がよく聞こえる。
はやい、弟者くんも緊張してるのかな？
背中に手を回せば、ぎゅうとより体が密着する。
「 ご飯、作ろうか？ 」
「 いい？ 」
「 うん、それとも外で食べたい？ 」
「 二人で食べようよ、俺も手伝うからさ。 」
どちらからともなく抱擁を解いて、家の中へ入る。
遮光カーテンだけ閉めてあるせいか、外からの電灯の光が部屋に入ってきている。それでもかなり薄暗く、電気を点けようとスイッチを壁伝いに探す。
その手は掴まれて、電気を点けることは叶わなかった。
「 弟者くん？ 」
目が慣れない暗さの中、掴まれた手を辿って彼の方を見る。どんな表情をしているのかわからなかった。
けど、彼が何をしようとしているかは察しがついていた。
どうしよう、大人みたいだ。
さっき抱きしめたばかりなのに、掴まれた手を強引に引き寄せられまた彼の腕の中におさまる。
彼を拒まないでいれば、耳元に顔を近づけられ言葉を囁かれる。
「 ご飯、後回しにしてもいい？ 」
「 …うん。 」
「 Aちゃん、好きだ。 」
「 …私も好きだよ。 」
「 触れてもいい？ 」
彼の言葉に静かに頷けば、背中に回されていた手が上がってきてうなじに当てられる。
そうして息がかかるくらいの距離に彼の顔が近づいて、私は目を瞑った。
その瞬間、彼の全てを求めるように私は彼の首に腕を回した。
それがスイッチになったのか壁までゆっくりと追いやられて、深く口づけを交わす。
「 Aちゃん、嫌じゃなかった？ 」
「 嫌だったら、受け入れてないよ。 」
私は自分でもわかるくらいくしゃりと笑って、彼を見上げた。
お互い目が慣れてきたのか、よく顔が見える。
もう一度ゆっくり顔を近づけ、頬を当てる。
「 どうしよう、俺今めっちゃ幸せ。 」
「 あはは、それ口で言っちゃう？ 」
「 うん、言っちゃう。…Aちゃん、ベッド行ってもいい？ 」
彼の優しい視線でとろけてしまいそうだ。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
