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「 俺さ、そんな恋愛経験なんてあんまりないし、ましてや好きな子が知らない男に口説かれてるのなんて見たくなくて。 」
「 …。 」
「 だからあの日、Aちゃんがナンパされてても平気だなんて何ともない顔して言ってたから…、それで冷たい態度取っちゃって。 」
ごめん、と大きく頭を下げる弟者くん。
彼が言ってる言葉に偽りの感情を感じなくて、私はまず嫌われてなくてよかったと安堵した。
その次に来た感情は、嬉しいみたいなものだった。言葉で上手く言い表せないけど、前みたいに話せることが嬉しかったんだ。
「 勘違いさせちゃってたよね、本当にごめん。 」
「 …私、すごく不安だった。 」
「 え？ 」
張り詰めていた糸がぷつんと切れたみたいに、私は唇を噛み締めるけど涙を抑えられなかった。
ぽたぽたと顔を伝う大粒の涙のせいで、視界が歪んで弟者くんの顔もよく見えない。
でも、私の顔へと手を伸ばした弟者くんの姿が見えた。
ゴツゴツした男性らしい手だけど、繊細に壊れものを触るように指先で私の涙を掬ってくれた。
「 な、泣かないで、ああ本当にごめん。 」
「 …だってえ、もう仲良くできないかと思ったからッ、 」
「 ごめんごめん。もう、こんな思いさせないから。 」
そう言って私の両手をぎゅっと握った。
困ったように笑うその顔は、歪む視界越しでも見える。彼の胸に頭を預ければ、私の頭に手を回し不器用ながらに頭を撫でてくれた。
余計に涙が出てくるなんて、彼は気づいてないだろうけど私は静かに流れる時間を噛み締めた。
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陽が落ちる気配のない夕方に、二人でゆっくり肩を並べ帰り道を歩いた。
彼はずっと私の手を握っていて、私も無意識に握り返したままだった。
「 Aちゃん、泣かせた後に俺が言うのもなんだけどさ。Aちゃんの気持ち聞かせてくれない？ 」
「 え？あ、あー…、 」
そうだ、弟者くん私のこと好きだって言ってた。
でも私は感情のままに泣いてただけで、彼に対してどう思っているか伝えていなかった。
「 …俺、フラれないよね？流石にここまで来たら俺も期待してるんだけど。 」
「 ふふ、…期待していいよ。私も好きだから。 」
そういうと弟者くんは、まじで？と気の抜けた返事をする。
照れながらだけど、私も首を縦に振って意思表示をする。
気づけば指を絡め合っていて、静かに二人で歩いた。
「 うち、くる？ 」
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
