もどかしい時間 ページ11
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「 もうそろそろ夏休みだけど、弟者くんは何するの？ 」
バイト中、暇な時間に差し掛かり私は彼に問うた。
彼はうーんと悩みながら腕を組んだ。
彼のことはこの数ヶ月間でなんとなくわかっている気になっていた。
でも彼とバイト外で会ったのはあの時の一回だけ。
バイトの帰り道に少し話をするだけで、本当は彼のこと何もわかっちゃいない。
「 そうだな、特に予定は決めてないなあ。Aちゃんは？ 」
「 私も何も決めてない。 」
「 あはは、そういうと思った。Aちゃん、意外とインドア派だからな。 」
彼もまた、私のことを知ったような発言をする。
でも嫌な気分になんかならなかった。むしろ私を意識してくれていて嬉しかったんだ。
「 あ、呼び鈴なった。注文聞いてきます。 」
私たちの会話を終わらせたのは、お客さんからの注文だった。
私は、急いでキッチンから出て卓へ向かう。
空いたジョッキとお皿がいくつも置いてあって、相当長居していると気づいた。
「 お待たせしました、ご注文どうぞ。 」
「 これとこれ、あと生追加で。 」
「 はい、すぐお出ししますね。 」
「 あ、お嬢ちゃん連絡先教えてよ。俺、——-っていうんだ。 」
注文がてらナンパをしてきたお客さん。
彼の揶揄をこの卓の人間は誰一人として止めようとせず、面白がっている。
いつもされることだから気にしてはないけど、なんだかいい気分じゃない。
私は苦笑にも似た愛想笑いを浮かべすぐにキッチンへと戻ってオーダーを通した。
「 …ねえ、Aちゃん大丈夫？ 」
「 ？どうかしたの、弟者くん。 」
「 いや、さっきのお客さん…、ナンパみたいなことされてたし。 」
「 ああ、いつものことだから平気だよ。 」
私は笑って誤魔化すけど、弟者くんは心配そうに真剣な眼差しで私を見ていた。
けどすぐに目は逸らされて、私もすぐに提供準備のできているビールジョッキを手にキッチンを出た。
なんか、弟者くん怒ってる？
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「 お疲れ様でしたー、弟者くん帰ろう？ 」
「 あ、いや、今日はごめん…、先帰ってて。 」
「 そ、そっか、ごめんね！お疲れ様。 」
店を出て、いつもみたく声をかければ弟者くんはいつもと違った様子。
どうしたの？と聞きたかったけれど、そんな勇気もなく私は言われるがままに帰路についた。
なんで怒ってるんだろう。
心がモヤモヤする。何かしちゃったかな。
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作者名：まる | 作成日時：2024年3月12日 18時
