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二つのカップを挟むようにして彼が座るとトワレのかすかな香りがして、忘れていた緊張がまた押し寄せて渡すはずのチョコレートの封をつい開けてしまった。
突然すぎる二人きりにちっとも慣れずまた失敗、
おずおずと箱を差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう!」
こんな場面でも堂々としているなんて羨ましいよ
対象外ってことかな
がっかりして隣を見れば金色の包みを開いて ぱくっと口にする姿にボッと顔が熱くなる
さっきから心が騒がしいのは煉獄君が隣にいるせいだ。少し落ち着こうと深呼吸をして空を見上げた。
*
「藤咲さんは 今、何をしている?」
「会社に行ってるよ。煉獄君は?」
「教師をしている!」
「教師 …似合ってるね」
「そうか?ありがとう!」
よくとおる声が懐かしい
嬉しそうなありがとう!が くすぐったくてにやけてしまう。
思いを隠すようにカップを口に近づけてコーヒーを飲んだらチョコレートがゆっくりと溶けて苦さが少し甘く変わった。
どうしよう、帰りたくない
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作者名:ふゆ | 作成日時:2023年12月2日 17時