6 ページ6
.
いつの間にか歩調をゆるめた煉獄君と並んで歩くと、何を話したらいいのか分からなくなって息をするのさえドキドキしてきて困った。
「あれから程なくしてタクシーが来たんだ。待たなくて良かったか?」
「歩けない距離じゃないから…大丈夫。煉獄君は良かったの?」
「彼女は同僚なんだ。
随分と酔っていたからタクシーで帰した」
「そっか」
ぎこちない会話でも彼女というフレーズにだけは反応して、帰したと聞いてはほっとする。
煉獄君はどうして一緒に歩いてるの?
夜道が危ないから?それとも…
疑問がぐるぐる回る私をよそに話を続ける横顔をチラッと覗くとずいっと覗き込んで返すから息が持たないよ
「藤咲さんは 寒がりなのか?」
そう尋ねる彼は寒い日なのにスーツだけ。
「寒くない?」
「むむ。質問返し?」
「だってスーツ。一枚だけ?」
「歩けば寒さなど忘れてしまうからな!」
「それ、ほんと? やせ我慢じゃ・・・」
「やせ我慢ではない! 寒くないぞっ!」
「ほんとに?」
かぶせるように言い張る姿に思わず吹き出しながら続ける会話は いくらかはスムーズにできているかな
「それ、覚えているぞ! 懐かしいなぁ」
「ぐるぐる巻きのマフラーにポニーテール、それが目じるしだったんだ」
「? これのこと?」
「ああ。だからさっきも気がついた!」
髪が絡まないためのポニーテールは首と耳が寒いから、それを防ぐために利便性のみを重視しているぐるぐる巻き。そんなのを目印にされていたんだと初めて知った。
ふいに手を伸ばして触れた髪先のくすぐったい感覚に赤くなったりして
.
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふゆ | 作成日時:2023年12月2日 17時