モノクロの君に、彩りを。【鬼滅の刃】

苦戦 ページ6

鬼の気配が強くなる。


自らを鼓舞するため、集中を高めるために、Aは深く息を吸っていた。



「御前達⋯⋯、柱⋯⋯か？」



硬く巨体のその鬼は、想像以上に強いことは明確だった。


柱でも小柄な伊黒とA。互いに一人で倒すには厳しそうである。


思わずAはお館様の采配に感謝してしまっていた。


たとえペアが伊黒であっても、一緒に戦う仲間がいることは心強い。



｢鳥の呼吸 壱ノ型 羽ばたき｣


淡い黄緑色の日輪刀が、軽やかに舞う。


「蛇の呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙」


紫色の日輪刀が、重くうねりをみせる。


それらの攻撃を易々と避けた鬼は、ボソボソと呟く。




｢その程度の技……弱いな……鬼殺隊も……落ちぶれたものだ｣




｢黙れ、塵屑｣


伊黒がキッと鬼を睨みつける。


「なんなの、鬼殺隊の最高峰舐める気!?」


怒りで眉根を寄せるA。


そのとたん、鬼はほくそ笑んだ。口角を上げ、何とも幸せそうな表情で。




「⋯⋯御前達⋯⋯鬼が、憎いか⋯⋯、もっと憎め⋯⋯」



「はぁ？」


Aの体から力みが消える。


(憎んでほしいの？ 勿論よ。鬼はみんな憎いもの)


｢鳥の呼吸 肆ノ型 響鳴双乱｣


先程よりも憎しみを強めて刀を振るが、鬼はビクともしない。


それどころか、むしろ強くなっている。


｢残念だな……雑魚柱達……御前達は……私、が成敗してやる｣


ゆったりしたその口調から畳み掛ける血気術。



｢血気術 憎悪の刃｣



鬼の腕が刀のように鋭く尖り、大きく円を描いた。


｢……っ！｣


腕に衝撃を感じたAは、咄嗟に受け身を取って地面に転がる。


(何コイツ。十二鬼月でもない癖に!!)


そう思った瞬間、鬼の体が一回り大きくなったように見えた。


｢もっと、憎め……！｣


｢蛇の呼吸 伍ノ型 蜿蜿長蛇｣


伊黒は日輪刀を振るが、鬼は薄気味悪い笑みを浮かべ、体を再生させる。


十二鬼月と負けず劣らずの再生力の速さ。


｢……憎い、だろう……？ 私が、憎いだろう……！｣


(どうして？)


憎め、もっと憎め。そう繰り返した鬼の言葉が頭をよぎる。


鬼の力が増したのは、Aや伊黒が憎しみを表した後。


もしかして、この鬼は、憎しみが原動力なのかもしれないっ……!?


Aは思わず飛び起きた。


｢伊黒！ 鬼から離れて、私に任せて！｣


驚いた表情の伊黒。


それに構わず、Aは声高らかに刀を振った。


｢貴方の攻撃は読み取れてるの！｣




同時に、鬼の頸は切れた。

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