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「ねえ伏黒〜」
「っ!?お前…ノックくらいしろよ……」
「ノックー?ああ、ごめんごめんつい」
「はあ……」
虎杖の(おそらく)無意識で発せられた言葉に驚きを隠せず、自販機へ向かおうと上げた腰は今やベッドに沈んでいる。
あの虎杖が幸坂を……と考えている時に急にドアが開いて部屋に入ってきてのは、思考の的である幸坂だった。
「それで?急にどうしたんだよ。」
「あ〜あのさ?すごく暇だったんだけどさ、野薔薇も虎杖も見つかんないし、伏黒いるかな〜?と思って。」
「なんで暇なんだよ。任務はどうした任務は。」
「伏黒だって任務してないじゃん。」
何言ってんの?と本気で俺を心配するような顔を向けてくる。
こういう所、すごく腹が立つ。
でも俺は、知っている。
「…暇なら、どっか行くか?」
「えっ、まじ!?連れてってくれんの!?私まだ東京あんまり詳しくないし教えて〜」
「ああ」
幸坂は感情を表に出すことが多い。
今だってそうだ。九州から上京してきた幸坂は、まだ東京に慣れていない。
東京の街を歩くことは、幸坂にとっての幸せのひとつだ。
それを与えられて、嬉しさに頬を緩ませた。
こういう所、すごくかわいいと思う。
「どこに行きたい?」
「ん〜やっぱり原宿とかかな?」
「原宿か。何しに行くんだ?」
「ちょっと見たいお店があるの!すぐ終わるからさ!」
「いいよ。行こう。」
「ありがとー!まじ感謝だわ伏黒さっすが〜」
ノリは軽いがそこも嫌いじゃない。
幸坂が釘崎に彼氏が欲しいと嘆いていたのは前に聞いた。(盗み聞き)
その時すぐに思ったんだ。
幸坂、俺の彼女にならねえかな。
「あ!伏黒ごめん!財布部屋にある!取ってくるから下で待ってて!」
「ああ。わかった。」
でも俺はわかる。
好きだからずっと見てきた。
幸坂は俺の事をなんとも思ってない。
仲の良い友達、信頼出来る仲間。その程度。
虎杖や釘崎が入学するまでは2人だけだったのに、その時からずっとこの距離だ。
どうすれば距離が縮まるかな。
どうすれば幸坂、俺の彼女になってくれるかな。
そう考えていれば、幸坂が降りてくるのを待つ時間なんて、1秒にも満たないんじゃないかと思った。
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作者名:鈴道 | 作成日時:2021年8月29日 2時