課題11 ページ12
「ただいま帰りました!」
「杏寿郎」
「父上…?」
「……お前、嘉柳と何かあったのか」
「!……無かったと言えば嘘になりますが……何せ俺にも分からないのです」
父上は相変わらずの顰めっ面で何やら考えている。
「……喧嘩ならちゃんと話し合え。大人だろう」
「……はい」
喧嘩、と言っていいのだろうか。そもそも俺が怒っていないのだから喧嘩では無いのでは……?
何も分からない俺は、一先ず自室に向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
バタン……
『……帰ってきたか』
謎の緊張と共に、私は部屋を出て隣の部屋の扉を叩いた。
すぐに扉は開かれた。目の前にはとても焦っているような、困惑しているような、泣きそうな、そんな片割れが立っていた。
「カヤ……」
『……すまない、杏寿郎』
何を言う前にまず今日の非礼を詫びることにした。何も言わず勝手に臍を曲げて、話しかけようとしてくれたにも関わらずそれを拒んだ。
こいつが何より恐れているのは、私に嫌われることだと、知っているのに。
「……何も分からなかったんだ」
『……うん』
「お前が何に怒っているのか……俺が何をしたのか……」
『……うん』
部屋に1つずつ落とされていく、杏の悲しみ。
「嘉柳……俺は何をしてしまったんだ……?教えてくれ」
『……っ、杏寿郎は何もしてないんだ……私がただ……私が……』
「…?」
『お前が離れてしまうと……とてつもなく寂しくなる……』
あぁ駄目だなぁ……もっと年相応の振る舞いをしなければならないのに……みっともない……情けない……私は何一つ変わっていない……
『すまない……ごめん……ごめん…杏寿郎……』
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年4月29日 9時