命令9 ページ6
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東の空が白んできた頃。雀が早くに朝を知らせる。
低い位置にある太い木の枝に寝そべって眠っていた川西は目を開けた。
スマホで時刻を確認し、ポケットから携帯食糧を取り出して口に入れた。しかし渇いた口の中では、水分の少ないそれは渇きを助長させ、ぎこちなく喉を通る。喉につっかえるそれが食べ物以外のものに思えてきて、川西は眉を寄せた。
川西「……これで、良かったんすよね。天童さん」
木々の間に見える空を見上げて川西は誰ともなく呟いた。
「おい」
背後から聞こえてきた声に、川西は体勢そのままに瞳だけ向けた。そして寝起きの掠れた声で問うた。
川西「なに。……てか
あんた、正気?」
鼻で笑いながら、川西は自分が鬼だという事を口にした。しかし、声をかけた人物はそんな事分かっていると言って、手で目を覆いながら一歩前に出た。
黒尾「俺はただ、確認しに来ただけだ」
川西「確認、か……それって今じゃなきゃ駄目なやつ?」
黒尾「なるべく早く済ませたい」
川西「……」
川西は木から飛び降りて黒尾を気だるげに見下ろした。
川西「で、確認って?」
黒尾は掌に汗を滲ませて、唾をひとつ飲み下した。そして、小さく息を吐いてから口を開いた。
黒尾「お前は、王様……なのか?」
早朝の森が静まり返る。眩しい程の光が2人を照らす。川西は迷惑そうに陽の光の方向を睨んでから、そのまま低く呟いた。
川西「そう思う訳は」
黒尾「……白布が」
川西は細めていた目を見開く。そして黒尾の方に首を勢いよく回した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
白布は黒尾の耳元に顔を寄せ、静かに口を開いた。
白布「……王様は、川西太一です」
黒尾「!!」
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黒尾「お前が王様だって言ってたから」
川西「……んなの信じられる訳ない」
黒尾「本当だ。昨日の夜、白布は瀬見と自分の携帯を俺に渡しに来た」
川西「!」
黒尾「そこで俺にそう言ったんだ」
川西は苦しそうに顔を歪めた。そして、ふっ……と綻ばせてまた朝日に顔を向けた。
川西「……嫌われてんな……俺。なぁ?賢二郎」
黒尾は不思議に思う。
それとほぼ同時だった。
川西が黒尾を押し倒したのは。
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すみた先生(プロフ) - 生きてる人さん» 読んでいただきありがとうございます!自分でもなんで川西をここまで育てたのかよく分かりませんが、役がハマったようで良かったです(笑)。どうかそのまま生きてください…… (7月24日 23時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
生きてる人(プロフ) - 読んでいるうちに片鱗は見えてたのですが命令9の川西が本当に大好きすぎました!!!!!!このような素晴らしい川西をありがとうございます!!あなた様のおかげで命が救われ気力体力全回復しましたありがとうございます!!!!!!! (7月24日 8時) (レス) @page3 id: 17d3aa535f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 命令9の最後にて、チーム分けに間違いがありました。国見と金田一が逆になっていた事をご指摘頂きましたのでここで報告させて頂きます。混乱された方、大変申し訳ございませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。 (2022年1月3日 19時) (レス) @page48 id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 員脚さん» ありがとうございますっ!どんどん加速してラストスパートかけていくんでよろしくお願いしまーす!! (2022年1月2日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
員脚 - あらあら!!!川西くんが活躍しちゃうわ!!!まさかBチームが勝つとは!!やっぱ“すみた先生”最高っスワ (2022年1月2日 22時) (レス) @page48 id: a61a8e014c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年8月9日 12時