王様ゲーム、切望。

命令10 ページ42

目の前に迫った丸い物体に、岩泉は反射で目を閉じた。顔面に強い衝撃を受ける。後ろに倒れた岩泉。


ボールは軌道を変え、低く回った。


木兎は手を伸ばす。倒れる岩泉を跨いで、瞳にボールだけを映して。




────嫌だ。死にたくない。生きたい。まだ何も、何も出来ていない。

────死にたくないけど、届かねぇだろうな。

────終わるのか。

────終わりさえ呆気ないな。

────もう何だっていい。



木兎、影山、澤村、国見、東峰。





運命とは、人生とは、時にとても無慈悲だと思う。誰も予想がつかない形で終わり、それが望まれなかったとしても、人の思いを無視して機械的に事務をこなすかの如く幕を下ろすのだ。酷い、惨い、優しさの欠片も無い。どれだけ批難しようと、彼は見向きもしない。




トン、聞きたくもない音が静かに弾む。



及川「……う、そ……」


嘘。ウソ。うそ。いやこれは真実。現実。事実。信じたくないだけ、受け入れられないだけ。

及川「っ……入ってない……入ってない！まだ試合は続行中だ！岩ちゃんは負けてない！！」

我を忘れたように及川は叫んだ。


川西「いいやそっちの負けだ。見てなかったのか？


俺の打ったボールが岩泉一の顔にクリーンヒット。で、ボールは床に落ちた。誰も繋げなかった。


10対8、Bチームは勝ち、Aチームは負けた。」




一斉に携帯が声を上げる。馬鹿の一つ覚えのように、受け取ったメールを報せるだけ。それがどれだけ心を抉るか、機械には分かり得ないのだ。







【8月11日 12:35

Bチームの勝利が決定した。負けたAチームの5人にランダムに罰を与える。】

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