王様ゲーム、切望。

命令10 ページ39

国見side


このゲーム、やっぱり面白いな……よく考え込まれてる。

何故こんなに呑気なのか、それは、俺が単に王様ゲームが好きなだけじゃない。


俺には幼少期から、ある感情が抜け落ちていた。生まれつきの欠陥。それが感情なもんだから、親には相当気味悪がられた。もちろん友達は少なくて、歳を重ねるにつれて自分のおかしさに気付き、その欠けた部分を隠すように普段から表情も消した。

嬉しさ、楽しさ、怒り。喜怒哀楽のほとんどは持っていた。でも、



俺には悲しむという事がどうしても出来なかった。


祖母の葬式の時も、誰かが怪我をした時も、親に叱られた時も、悲しいと思った事がなかった。親に叱られた時はまぁ、悔し涙くらいはあるけど。多分その時は相当苛立ちがあったんだろう。そうでなきゃ俺の目から涙なんて出てくるはずがないんだから。

中学の時、金田一に出会った。何とも感情豊かな奴だと思った。何でもない事で喜び、怒り、悲しみ。笑ったり泣いたり忙しい奴だなと。影山のせいでチームが壊れそうになった時、金田一は自分の好きなバレーを曲げてまで、上げられるトスを無視してまで繋ぎ止めようとしていた。あの試合の後で、金田一が泣きながら俺に言った言葉が、俺は今でも忘れられない。


〈仲間にこんな事をしなきゃいけないとか……悲しすぎだろ…〉


仲間に冷たく当たって何が悲しいのか。俺にはさっぱりだった。もちろん俺は人並みに他人に興味はあったし、それなりに影山とも話は合う方だと思ってた。だけど、あの時は何とも思わなかった。


つまるところ、俺は酷い人間なんだろう。どんな惨事でも、悲劇だろうと、本心で眉ひとつ動かせない冷たい人間。そんなだから、こんな殺戮ゲームでも楽しいと思える。

金田一、ごめんな。俺はお前が羨ましかった。自分の為にすら泣けない俺は、仲間の為にさえ泣けるお前が、ずっと羨ましかったんだ。


俺は、王様ゲームに期待していたんだろうか。普通なら経験し得ない惨劇を体験する事で、もしかしたら俺にも悲しむ心があるんじゃないか、このゲームを通してそれを証明して、俺を普通の人間だと認める事ができるんじゃないかって。




国見「影山、いつでも上げろ」

影山「……おう」



でも、駄目みたいだな。

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