王様ゲーム、展開。

命令8 ページ36

突如、扉を無遠慮に開けて入って来たのは




山形「及川……？」


その顔は夕日による逆光でよく見えない。









及川「大平くんは、死んでたよ」




たった一言。されど、教室内の空気を一変させるには十分すぎる一言だった。






止まった時の中で、山形が声を漏らした。


山形「…は……？」

及川「……」


及川は後ろ手で扉を閉め、光を遮った。見えるようになった顔は、目元だけを赤くして表情を消していた。



及川「……マッキーも死んだ」


酷く冷たい、しかしその中には明らかな悲しみを孕んだ声。



山形「じゃあ……っ、生き残ったのは……」







「木兎」







川西「賢二郎……？」



膝に埋めていた顔を上げ、白布は立ち上がった。






白布「牛島さん、山形さん。






……すみません、俺行ってきます」




そう言った白布は、本当に限界だという目で川西を横目で見た。


川西「……」

山形「！白布っ」

一拍遅れて山形が白布の肩に手を伸ばした。



白布「すみません山形さん。

俺は、こういう形でしか4人に報えません」

山形「お前……」




分からなくなっていた。命の使い方が。

守られてきた命をどう使えばいいのか。



真っ暗な空間に放り込まれたようだ、と白布は怖くて怖くて仕方がなかった。


ただそこで、一つだけ光が見えたとしたらそれはきっと、命の使い方なのだろう。

死んだ仲間への手向けなのだろう。


牛島「白布。お前は本当にそれでいいのか」

白布「……牛島さん、俺は自分の選択を良いものだとは思ってませんが、



自分に正直な選択だとは思ってます」

白布は扉に手をかけた。その手を、黙って見ていた及川が掴んだ。


及川「正しい道じゃないの、分かってるよね」

白布「……放せ」

及川「君より強いはずの先輩が2人も、たった1人に殺されたんだ。

自分じゃ敵わないって分かってるはず」


白布「分かっててもっ！！……俺にはこれしか無い」

白布は乱暴に及川の手を振り払って廊下に出た。及川もまた、何も言わずに戻って行った。

川西はその様子をいつもの眠たげな目で見届け、口を開いた。



川西「賢二郎を責めないでやってください。これは……仕方なかった、ってやつです」

山形「でも！……もし返り討ちにあったら」

川西「さぁ…本望なんじゃないすかね」


牛島「川西……お前は、白布の考えが分かるか？」


牛島の問いに、珍しく眉を八の字にして



川西「俺、人の心が分からないもんで」

命令8→←命令8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す