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ジフン「……なんかあった?」
Aは元々お酒が得意じゃないし、何かあったら危ないからと、俺たちから1人で酒を飲むことを禁止されているAが1人で飲むなんてあり得ない。
1本丸々開けているということは、お酒に頼りたくなるような何かがあったのだろう。
そう思って聞いてみると、さっきまでの陽気な声に変わって、鼻を啜る音が聞こえてきた。
ジフン「どうした?」
強がりなAは、泣いてる姿を見られたくないことを知っていたので、顔はそのままテレビの方を向きながら、俺の肩に顔を押し付けて泣くAの頭をゆっくり撫でてやった。
「……なんか、急に、不安になっちゃって」
「うん」
「……もうすぐ日本ツアー始まるけど、体力的について行けるかなとか、ツアーの公演と、あの……女の子の日が被っちゃったらどうしよう、とか、日本のファンの人は、私のこと認めてくれるのかな、とか……」
「うん」
「そんなこと考えてたら、なんか眠れなくなっちゃって……」
ポツリポツリと、ゆっくり答えてくれるA。
そういえば、今日の練習は、Aは先生から注意を受けることが多かった。
先生もAに期待をしているからだし、たまたま、今日は注意されるポイントが多かっただけだろうけど、Aは自分の練習生歴の短さからダンススキルに自信がある方ではないので、落ち込んでいないといいな、と考えていたんだった。
Aはストイックに自分の理想像を高く設定している割に、元々メンタルが強い方ではないから、そういう些細なことで必要以上に考え込んでしまうことがある。
あの時声をかけて、そのまま打ち合わせに同席させればよかった。
宿舎に1人にさせたことを、後悔しながらそう思った。
ジフン「大丈夫だよ、Aは、上手くやれてるよ。」
A「……」
よっぽど自信がないのか、首を振るA。
「日本ツアーだって、それまでに体力をつければいいし、練習の日にしっかり集中してやれば、休みの日はホテルでしっかり休めばいい。体調のことだって、他のメンバーやスタッフに言いにくければ、俺にだけでも伝えてくれれば気にかけてあげれるから。
それに何より、日本のファンの皆は、Aが日本のステージに立つことを楽しみにしてると思うよ。他の日本人メンバーもそうだけど、メンバーが地元でステージに立っている姿を見ることを、ファンはどれだけ楽しみにしていることか。」
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作者名:くろ | 作成日時:2022年11月7日 4時