絶対に彼なんて…【青】 (ページ3)

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彼の人気は、日を追うごとに高まって、高3になると、近所の女子校からも、彼を見に来る子たちが現れ、校門前は異様な光景だ

そんな女の子たちを尻目に、門を出ると

「安田くん、もぉ帰っちゃったらしいよ」

「えっ？ウソっ。だって、いつもこの時間は学校にいるでしょ？」

「なんか、今日は外せない用事があるとかで、裏門から出てったって」

「まさかっ、彼女とか？」

「それはないでしょ～。一昨日話した時は、彼女いないって言ってたもん」

「そぉだけど、安田くんモテるし…」

道を塞いで、大騒ぎしてる女の子2人

「はぁ…」

本当に迷惑。仕方がないから、踵を返し遠回りして家路についた

「ただいま～」

今日はツイてない。最悪な気分のまま、リビングのドアに手をかけると

『いえいえ、そんな事ないですよ～』

この声、聞いた事ある。でも、なんでっ？
ゆっくりとドアを開けたら

「深谷さん、お帰り～」

「…………」

想像していた人が、ニコニコしながら、ソファーにちょこんと腰掛けていた

「なんでいるの？」

「えっ？レッスン受けに？」

「はぁっ？」

「安田くんね？ギターやってるらしいんだけど、ピアノにも興味があるって。さっき弾いてもらったんだけど、初めてとは思えない。良いセンスしてるのよ」

母が、人を褒めるのなんて、いつぶりだろう

母は、生徒にはとにかく厳しいと有名なピアノの先生

特に私には厳しくて、毎日何時間も練習させられて、友達と遊ぶ暇なんてなかった。小さい頃は、やらされてる感覚しかなかってけど、今はピアノを弾くことは好きだし、苦にはならない

音大への進学も、自分で決めた事だけど、母が叶えられなかった、“ピアニスト”の夢を背負ってそれを目指すのは、プレッシャーに感じているのが、本当のところ

私のことなんて、褒めた事ない母が、彼のことはベタ褒めで

ちょっと、面白くない

「えへへ。先生の教え方が上手だからですって」

楽しそうに会話する2人を見ていたら、その場に居づらくなって、無言で自分の部屋に戻った