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 地雷を 踏んだんだなあ (自由律俳句)



「──硝子は高専専属の医師だよ〜!医師免許ズルして2年で取ってるからねアイツ! 傑はいま海外出張! 髪めっちゃ伸びてるよ! 」

 幸いにも不発弾。けど、足裏で擦ったりしたら限界を迎えて破裂しそうなそれを 私はわざとつま先でつっついた。


「喧嘩したんだ」
「ん? 誰と?」
「夏油」


 爆発したかな?

 依然として腰に絡みついている腕。困ったようにきゅ、と締めつけてくるのに、なぜかすぐに逃げ出せるくらいの脆い拘束。私がそうしないのは、つまりはそーゆーこと。

 昨日触ったときと変わらない髪が肩口に触れてくすぐったかった。


「もー凄い、なんで分かるの? エスパー?」
「は? 適当だけど」
「そこは「悟のことならなんでも分かるよ」でしょ〜」

 ぽんぽんと頭を撫でられて、あ、今でもこうやって頭を撫でて、その長くて頼れる腕に閉じ込めるのが 好きなんだとふと思った。持ち上げられた下半身が腿の上に乗って、首筋に呼吸を感じる。


「先生」
「今は悟がいい」
「なにも言わないよ、私」

 桃鉄、借金続きでムカついてゲーム機壊したら喧嘩になったとか? どうしても互いの考えを肯定できなくて一生会えなくなったくらいの喧嘩?

 事情も程度も分からないから、知らない私が語るのは、それは違うよ。


「意地悪だね、Aが聞いてきたのに」
「意地悪だからね、28の悟に寄り添えるのは28の私だけだもん」
「何も知らない16のAならなんて言うんだろうって思ったんだよ」
「黙って背中を押して 前に進ませることしかできないよ」
「同じことしてくれるんだね」
「あ、そうなんだ」
 
 頭を撫でられる度に強まる眠気。どうやら術式がそろそろ解けるらしい。

 あー楽しかった。僕、になってるのは正直笑えるし、目隠しを贈った私のセンスもイカれてて笑えたもん。






「ねえ。結婚してくれないんだよ、A」
「悟が弱くなるからでしょ」
「らしいよ? もー、Aが僕の弱点になるなんて光栄の至りなのに!」
「でも指輪はつけてるんだ」
「最初に言ったじゃん、自由でいいから最後には隣にいてほしいって。Aが僕のことすぐに見つけられるための目印だよ」

 ーーだからってそれは重いでしょ。


 ーー呪術師にとっちゃこれくらい重くなきゃ。


 ーー愛してくれてるんだね。




 ーー同じくらい愛されてるよ。








 ────これって、なんて幸せな夢?


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作成日時:2020年12月30日 22時

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