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「なにこれ、待ってなにこれ……！？」
おずおずと人差し指で触れた頬は、もうなんか、凄い。ニキビ無いですよね？ 毛穴どこですか？ と、スキンケアの方法を聞きたくなるくらい瑞々しい、皮を剥いだゆで卵みたいになだらかな艶肌。ゆで卵よりゆで卵してるんだけど……、無性に自分が女ですみませんと誰かに謝りたくなった。
「こんなことがあっていいのか……！？ 五条って本当は」
「男に決まってんだろ馬鹿」
日に焼けている感じは一切見られない素肌。頬骨の真上を指の腹でくるくる円を描いたり、ふにふにと押したりしてそれはもうやりたい放題させてもらっている。五条の上に倒れ込んでこんなことしてるとか今はもうどうでもいいわ。お好きにどうぞって言われたらなんでもしたくなっちゃうよね、ふへへへ、癒される……！
「で、結論は？」
「整形とか言ってごめんなさーい！」
「よし」
望んだ答えを受け取った五条の満足そうな顔のあとも、親指とそれ以外の四本で両頬をそっと挟んだりそのまま優しく揉んだり、って、止まんねえぞこれ！？
「楽しい……」
「……」
親戚の赤ちゃんを抱っこさせてもらったときと一緒の感覚がする。あたたかくて、やわらかくて、綺麗。あとなんでか安心感。
五条の心臓の音が制服越しからちゃんと伝わってくる。とくんとくん鳴っている響きがあんまりにも心地がいいから、どこからともなく授業中の睡魔に似た微睡みがそよそよとやって来た。
「ねえねぇ五条、」
「あー？」
例えば世界で一番綺麗な宝石が坂道を転がっていて、途中で窪みにすっぽり入り込んだとするなら、そこはきっと五条の眼窩なんだと思う。一切のずれも歪みも無く嵌っている、暗闇でも輝きを失わないその碧い双眼の下、雨が振りだす直前の黒雲みたいな色で浮き出る隈をそっと触れてもう一度苗字を口にした。
「……なんだっけ？」
「いや忘れんな」
「嘘ぴょん、ちゃんと覚えてるもんね〜。……今日こそ五条がちゃんと寝れますように」
これは慈悲深い(確信) しかも本心で願ってあげてるんだから尚更だわ(確信)
「……決めた」
「何が？」と聞くより先に、忘れかけていた腰に回っていた腕の感触が強くなってはっと我に返る。腕離してくれませんかね？
「お前俺の事嫌いじゃないよな？」
「は？ ……うーん、まあ、うん」
「パフェ好きだろ？」
「うん！」
「じゃあ付き合おうぜ俺ら」
「うん、……いやうんじゃないなんだ今の！？」
！！？
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作成日時：2020年12月30日 22時
