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「……なにが？」
「泣かせた責任取ってやるっつってんの」
「願いごと一つ聞くみたいなこと？」
「そ」
「ふぅん、じゃあこの体勢やめよ？」
「は？ お前の言うこと聞くんじゃねーよ、逆」
「おかしいだろ……」
ていうか退こうとすんな。逃がさないように両腕で抱き込めたまま90度右に回転した。……さっきカッコつけて引き寄せなきゃよかった、めちゃくちゃいい匂いする。
「五条……」
そんな当人にとっては予期しない展開のよう。白っぽい小顔を視界に収め、戸惑いの揺れる双眸をそっと覗き込んだ。
「怖い？」
「いつまでも情報が完結しないから怖いかどうか分かんない」
「何言ってんだお前？」
「お前が言わせたんだよ、あと何がしたいの？」
随分と懐疑的な渋面で首の皮膚を抓る生意気な行動にちょっっとだけ気分を害した俺は、その手首を手軽に持ち上げて自分の左頬に宛てがった。ドクドクと鼓動する動脈の緊張っぷり。うっかり一笑してしまったけど今度こそ俺は悪くない。
「お前こそなにドキドキしてんだよ」
「してない」
「手首バクバクいってるんですけどー？」
「あー命の危機を感じてるのかなー？」
「いや俺の顔にドキドキしてる」
「でもそれ整形でしょ？」
「だと思うなら顔触ってみろよ」
即座に生気を失った「やらかした」みたいな顔。他の奴らに対しては知らねーけど、俺コイツへのSっ気半端ないわこれ。やっべーめっちゃ楽しい。
「ひぇ……遠慮というか拒否するわ、五条くんの御尊顔に指紋なんかつけらんないよ……」
「棒読みバレてんぞ。それに自慢の顔を整形って疑われたくないから早く確かめろって、ほら、ほら」
「びゃー！ いいってば！」
「はいもう一度回転しま〜す」
横向きから再び直角に回りコイツを体の前側に乗っけた体勢になって、今度は腰に腕を。うっわ〜、顔真っ赤。
「もーなに！？ 顔触ったら解放してくれんの！？」
「整形疑惑をかけられて俺はとても悲しいんだけどなー」
「もー分かった分かった！ だから、こ、腰の手離して……」
「え、無理」
「じゃあ触ってあげないから！」
「その代わり離さないけどな」
「ぉ、お、お前……っ」
いやーチョロすぎる。一年の時は全然分かんなかったけど詐欺とか遭いやすいタイプだこれ。今言ったら顎からアッパー喰らいそうだから言わねえけど蠅頭祓うよりヌルゲーだわ。
「……さ、さわるよ」
「お好きにどーぞ」
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作成日時：2020年12月30日 22時
