我が恋よ、散ることなかれ【浦島坂田船】 (ページ5)

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　彼の口から出された“吉原”という言葉。まさか本当にここが、吉原……。ん、ということはここは江戸時代とかそういう？

「しぃーーっ！ばれてまうやろ！」

「あ、ごめんなさい……。……徳川家康さんとか徳川さん知ってますか？幕府に。」

「徳川……？知らんな。てか幕府も何？」

　あれ、じゃあ江戸時代ではない……？つまりここは、日本の吉原ににてる別世界の吉原ってこと？

「じゃあ、さっき呼ばれていた“紅里花魁”というのは……。」

「俺の名前やで。遊郭『花鳥風月』の花魁。」

　このイケメンが花魁！？何それこの世界の女性うらやましっ！！でもやっぱり気になるのは、ここが別世界の吉原だとしてもなぜ女性が花魁ではないのかということ。
　確か吉原は遊女である女性が男性の客の相手をするところ……だよね？なのに男性である彼が花魁って……。でも廓言葉？ってやつも使ってたし……。

「……んふ、考えとるねぇ。まあ何考えとるかはだいたい察しとるけど。」

「え。」

「なんで男の俺が花魁かってやろ？」

　察していらした……。そんなに分かりやすいかな、私。彼は胡座をかき、右膝に肘をついて頬杖をつきながら私を見る。

「俺の見世はな、珍しく女郎も男郎もおるんよ。やから客も男も女もおる。女郎は男相手がほとんどやけど男郎は女も男も相手する。やから、俺が花魁なこともありえるってわけ。」

「なるほど。」

「うん。……じゃ、次は君のことも教えて。名前も聞いてへんかったし。」

「あ、はい。……花巻Aといいます。」

　私はここに来た経緯をざっくりと彼に話した。帰っていたら落ちた、と。話し終えると彼は腕を組んでうーんとうなった。あっ、待ってそんなにのけぞったら着物の中見えちゃう。

「つまり君はこことは違う世界の人、と……。なるほどなぁ……。」

「え、信じてくれるんですか？」

「まぁ、君がさっきから聞いてくるのに俺が全然知らんこととか、その着てるひらっひらの服とかが証拠にはなっとるし。それに俺、不可思議なこととか好きなんよね！」

　まさか信じてもらえるとは。こういうのって普通信じてもらえないものだろうに。