我が恋よ、散ることなかれ【浦島坂田船】 (ページ31)

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「はい、完成。」

「うわぁ……！可愛いです！ありがとうございます！」

　雪音ちゃんと夏佳ちゃんの髪結いを終わらせれば二人ともキラキラとした目をして鏡を覗いていた。さんざん見終わると次は坂田さんの元へ。

「兄さん！どうですか！？」

「よく似合ってるわぁ。」

「ありがとうございます！！」

　二人とも嬉しそうでよかった。キャッキャとはしゃぐ二人とそれを見守る坂田さんはほんとに兄弟みたいな……。
　髪を結うついでにつけた簪や、自分用にとちょこちょこ買って溜めていた紐などの飾りも付けたのでとっても可愛い。自分で見ても可愛い。よくやった自分。よくぞ可愛さを引き立てた。

　ちらりと浦里花魁を見れば彼は私を見ていて、ちょいちょいと広間の中を指差した。その通りに見るとこちらを見ている傾城さんたちが。

　……私はこれからここで生きていかなくちゃいけない。その為にも私はここでの居場所を作らなくちゃ。

「……あ、あの、皆さんの髪結い、もしよければやらせていただけませんか？もし、興味がおありなら是非。あ、ただ、これをやると髪にあとが残ってしまうのですが、楼主様に許可をいただいて次の日に髪を洗ってあとを直すことになります……。」

　傾城さんたちは目を合わせて戸惑いを顕にしていた。いくら浦里花魁の案でも流石にこれは無理かなぁ、と諦めモードに移行しようとした。そんなとき。

「……あの、若衆はん？」

「え、はい？」

　そばに寄ってきた女郎さん二名と禿ちゃん。三人は私に何て声をかけようかと悩んでいるのか、目をキョロキョロと動かしていた。
　これは私から声をかけるべきか？と口を開こうとすると、それを遮って一人の女郎さんが声をかけてきた。

「もしよかったらわっちらの髪を結っておくんなまし。」

「え……いいんですか？もちろんやらせてください！」

「っ、お願いいたしんす！」

　女郎さん二人にはあまり凝りはせずすぐにほどけて、でも綺麗に見えるような髪型を。禿ちゃんにはみつあみと編みこみを使って可愛く見える髪型を。
　結い終えて鏡を見せると三人はとても喜んでくれた。そんなに喜んでもらえるとは思わなくて照れてしまったけど。
　それをきっかけに多くの傾城さんが髪結いをやらせてくれた。同時に、名前を教えてくれたり、今までの態度を謝ってくれる人もいた。

　ようやく受け入れてもらえたような、そんな感覚。思わず坂田さんを見るとニコッと笑顔を向けてくれた。

(見守ってくれていたんだ。私を。)

　なんだか気恥ずかしい。私も笑顔を返した。