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蝶屋敷を訪ねる。
目的は任務の内容を確認するために胡蝶に会うこと……本当に、それだけだ。
今日もまた、出掛けているとか言うんだろうと思っていたが……今回は、流石に居た。
町を歩きながらゆったりと話を進める胡蝶の話は、確信が掴めなくて、なんとも分かりにくい。
「今日は、たまたま出掛ける用事がなかったのよ……ごめんなさいね、しのぶと話したかっただろうに」
一瞬、ドキリとする。
自分でも気づかずに隠していた、本性のようなものが、掘り出されたみたいで。
「……そんなことのために、俺はあそこまで行かない」
慌てて繕った冷静な態度も、胡蝶の前では役に立たない。
「あら、でも。しのぶと仲良くなれたのは本当でしょう?絶対に気が合うと思ってたのよ〜」
「……わかってたのか?」
「いいえ、たまたま」
「お前なぁ……」
呆れて、もう突っ込む気力もない。
俺は本当に胡蝶に振り回されてばかりだ。
どうしたら胡蝶の思う壺にならないか……なんてことを、ふんわりと笑う胡蝶を横目に考える。
すると、隣を歩く胡蝶は突然、いつもとは違う、はっきりとした物言いで俺を見つめた。
視線が真っ直ぐ過ぎて、痛いくらいだ。
「もし、しのぶが独りになったら、支えて欲しいの」
「……は?お前、何言って……」
「聞いて。もし私がしのぶの側にいられなくなったら、しのぶは心を許せる人が居なくなってしまう」
「何の、話だよ……」
まるで見当がつかなかった。
あまりに真剣な顔をして言うものだから、他人事とは思えずに話を聞くけれど。
「そのとき、あなたがいたら。しのぶはどんなに救われるか」
「……意味わかんねぇ」
「きっと今にわかる。そしたらお願い。私の代わりに、たくさん愛を注いであげて」
「愛……」
突然のこと過ぎて、何が何だか、理解できない。
独り……って、どういうことだよ。
そうなる確信があるっていうのかよ。
聞きたいことは色々あったけれど、有無を言わさぬ胡蝶の眼差しに、俺は。
「……わかった」
そう、言うことしかできなかった。
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その数日後、胡蝶は、ふわふわと笑っていたのが嘘のように忽然と姿を消した。命を落としてしまった……_____
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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時