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「俺……」
「ん?」
婆さんが団子の串をくわえて「どうしたのさ」と尋ねる。
俺は、初めての感情に自分でも収集のつかぬ思いを抱いていた。
……まし、どころか。
話したいと、思っていたのか、俺は。
女と。
あいつと。
「しのぶと……?」
「しのぶぅ?」
亭主がすっとんきょうな声をあげる。
「その名前……女だろ?へぇ、ついに想い人ができたんか!」
「ばっ……!ちげぇよ……わかんねぇけど……」
言葉の続かない俺を、二人は静かに待ってくれる。
「他とは違うように思う……それだけだ」
言うと、婆さんは「へぇ」と興味深そうに顎に手をあてる。
「他とは違う女って……あんた、その子を特別に想ってるってことだろ?恋以外に何があるのさ」
「そうだそうだ!お前もやっと女か。長かったなぁ」
「だから違うっての!これだから老人は……」
駄目だ、こいつら。
呆れてため息を吐くついでに、そのしのぶのことを考える。
まだ日は浅いけど、あいつはどこか今までの奴と違った。
姉貴分の話に共感できる部分があるときは、すごい親近感を抱いた。
ムスッとした顔が俺との会話で和らぐと、何故か、いい気分になって。
色々思うことはあるけど。
「恋じゃ、ねぇよ……」
「あら、そうかい」
「つまんないねぇ」と、俺を小突く婆さん。
亭主は「しのぶ、なぁ」と呟いて、俺に言った。
「いい名前じゃねぇか」
……俺も、初めて聞いたときから、そう思ってた。
「本当にな…………」
言いながら、まるで自分の隠れた想いを否定するような「恋じゃない」という言葉が妙に引っ掛かってしまう。
色恋色恋って言うけどよ、なんだよ恋って。
今まで、いまいち意味も知らずに聞いていた単語。
特別?
それだけで成り立つもんなのかよ。
そんな単純な言葉?感情?
……ああ、もうわっかんね。
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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時