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「Aさん……」
掠れた声で、俺の名前を呼ぶ。
白く細い手が俺を離さなくて、こんな、一見弱々しげな手で屈強な鬼を葬ってきたのだと思うと、少し信じられない気持ちだった。
目の前で横たわるのは、あまりに色っぽい、ただの綺麗な女で。
あー……これ、ひょっとしたらやべぇかもな……なんて思いつつ、その小さな手を握り返す。
多分、無意識なんだろうが……手拭いを掴んだ方の手を頬に寄せて、「冷たい……」と、口をつける。
「しのぶ……っん」
「気持ちいい」とか言って、艶のある唇を俺の手に寄せた。
っ……あーこれ、マジでやべぇ……
「苦しいな…………」
心臓の辺りが締め付けられて、どうにかなってしまいそうだった。
「……さぁ、お前……さっき嫉妬がどうのとか言ってたけど…………」
言って、しのぶを見てみれば、長い睫毛がゆらゆらと揺れている。
寝そうだな……
宇髄も言うように、俺のことでストレスも溜まっていただろうし、蝶屋敷のことで責任だって感じていただろう。
そりゃ、熱くらい出して当然だ。
ましてや、雨に打たれれば……そんなん、風邪引きに入ったようなもんじゃねぇか。
俺はしのぶのでこに、頬にキスを落として、一人語り出す。
「しのぶを好きになったのは、確かお前が、男に囲まれてるときでさ……」
自分で話しながら、そういえばそんなこともあったな……と、そのときの情景が連鎖のように浮かんだ。
「しのぶ、すげぇ綺麗なのに、口が悪くてさ……あんとき、荒れてたよな」
しのぶは、既に眠りについていた。
「あんまり困ってたもんだから、俺は間に入って……」
そうだ、しのぶと初めて会話をしたのはそのときで……
「俺が大丈夫か?って聞いたら……」
ああ、そうだった。
そうしたら、しのぶは……
浮かび上がる、何もかも。
俺が、しのぶの何に引かれて、どう距離を縮めて。
喋って。どうでもいいことで笑って。
それがすげぇ嬉しくて。
泣かれて、拒絶されて、絶望を知って。
しのぶという女を知って。
そうだ、あれは……何年前だったか_____
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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時