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自分が自分でなくなっていくよう。

今までに感じたことのない、邪悪な感情が沸々と沸いて出て。

何故だかわからないけれど、涙を流した。

雨と混ざってしまって、どれがどの滴かなんて、わかったものではないけれど。



私は、髪から蝶の飾りを取って、見つめる。

その視界さえも、涙でじわりと滲んだ。



「Aさん、」



わかっている、自分勝手な行動だって。

これが衝動的なものだということも。

だからこそ、今は、Aさんに会いたくない。

どんな言い訳も聞き入れられそうにない……



雨の中、座り込んでしまおうとしたその瞬間。



「しのぶ!」

「Aさん…………」



背中から聞こえる、必死な声。

探して、くれた……?雨の中……?でも、それでも、私は。



距離を縮めて、触れようと、手が伸ばされる。

だけれど、私はそれを払い退けて。



「いや……!触らないでください……っ」

「し、のぶ」



驚くAさんは、呆然と立ち尽くす。

そう、これでいい……今、貴方に触れてしまえば、何かが溢れ出してしまう。

そのはずなのに、中々に晴れない心をおさえつけるように、胸元をぎゅっと掴むと。



「しのぶ」

「やめてください……!」



正面から、抱き締められる。

必死に胸元を押し返すけれど、ビクともしない。

その上、耳元で囁かれて。



「ぜってぇ離さねぇ……」



さらに、力強く、抱き締められる。

水で衣服が濡れて、肌と肌とが密着しているかのような感覚に陥って。

どくどくと心臓の鳴る音と、熱くなっていく身体。

気持ちいい……抱き締められていたい、ずっと。

……そう、思ってしまって。



「ごめん……しのぶ」

「謝らないで、下さい……」



背中に回された手に、力がこもっている。

貴方の方が、泣きそうな表情をしている……そんな顔をさせたい訳ではなかったのに。



「しのぶ……」



低い声で、甘く囁かれて。

背筋がぞわりと震えるのと同時に、唇に感じる、貴方の感触。



「Aさん……っ」

「しのぶ……しのぶ…………っ」



もう、お互いの名前しか言えなくて。

でも。



……それでよかった。





ー→←6章:誤解なるもの、



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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時

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