【男主】溺欲【不死川実弥】

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刀を鞘に収める。

闘いの疲労によって、思うように動かない体。

それを無理矢理に引きずって、太い木の幹にもたれかかる。

痛い、苦しい、怠い、疲れた……思うことは沢山あっただろうが、最初に感じたことは、ただ、Aさんに会いたい、だった。



俺には到底、真似の出来ない、全てを慈しむような微笑み。

頭を撫でる優しい手つき。

凛とした声、背姿。

全て。

全てが愛しい。

会いたい、会いたい、会いたい。



死んだっていい。ただ、Aさんに会えれば、なんだっていい。

抱き締めて、接吻(キス)をして。

…………叶うなら、想い合いたかった。



自分でも、どうしようもないくらいに、Aさんへの欲が溢れていく。

自身の欲に、溺れていく。



「Aさん」



Aさん。



そのとき。



「実弥………………？」



声が、聞こえた。

求めていた声、そのものが。



「Aさん…………？」



…………Aさんだった。





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