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実弥が任務に出掛けて、早二日。
鍛練後、実弥にお萩を奢ってやるのが日課で、つい甘味処に来てしまったが……実弥のいないそこは、酷く虚しかった。
仕方なく一人でわらびもちを食うが……こんな味だったか、わらびもちというものは。
味なんて、変わるはずもないのに、今はただ、もそもそとした何か物体にしか思えなかった。
「……はぁ」
思わずため息をついてしまう。
仕方なく、あまり食欲の沸かない腹に、頼んでしまったわらびもちを詰め込んでいると
「派手なため息だなぁ、Aよぉ」
隊服ではない宇髄が、奥さんと一緒に甘味処にやって来た。
「…………宇髄」
「わらびもちいるか?」と聞くと、宇髄は目を輝かせて、「おー貰うわ」と、俺の隣に座る。
宇髄は奥さんに、何処かで待っているよう、目で合図をした。
……悪いことをしてしまった。
「すまない……そういうつもりではなかった……」
「あ?いや、二人だけで話したかったからいいんだよ。それよか……」
宇髄はわらびもちを頬張りながら、俺の首もとに手をやった。
「いやー、これまた派手にやったなぁ」
宇髄はそう言って、実弥のつけた噛み痕を親指で撫でる。
コイツ、実弥が付けたって、わかっているのか……!?
ニヤニヤと感じの悪い奴だ。顔がいいので、文句は言えないが。
「これは……違う、あのな」
「違うって……でもよ、お前が派手に落ち込んでんのは、不死川のことだろ?」
「っ……!」
自分でもわかるくらいに、顔に熱が一気に集まる。恥ずかしくて、うつむいた。
「へぇー?あからさまじゃんかよ」
「煩い」
「首、赤いけどな」
「触るな……おい、やめろ……って!」
_____散々に俺をからかった後、「はー面白かった。ご馳走さん」と、宇髄が立ち上がる。
その時、宇髄が思い出したように振り向いた。
「不死川も、お前が居ない間、同じように落ち込んでたんだよなぁ」
「…………え?」
もっと詳しく聞きたかったが、宇髄はもうこれ以上話すことなど無いとでも言うように、
「コレ、あんま見せびらかすなよな。派手だぞ」
最後にもう一度、噛み痕を撫でて、去っていった。
「っ……るさい!このっ…………皮肉柱!」
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□大正こそこそ噂話□
Aさんと宇髄さんは同い年だよ。
唯一、冗談を言い合えるような仲だよ!
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mikitty(プロフ) - 好きです!!!! (2022年12月25日 13時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - やっぱり何回見ても最高だなぁ、ぐへへ(( (2020年12月19日 14時) (レス) id: 4fc468f2f2 (このIDを非表示/違反報告)
柴犬(プロフ) - 素敵な作品ですね...、愛情表現や色気のあるシーンがすごく好きで一気読みしてしまいました。他の作品も読ませて頂きたいのですがパスワードというのはどちらで伺えばいいのでしょうか...? (2020年5月30日 9時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ohagi - めっちゃ最高でした。自分も腐ってるのでBLの方がよけい萌えました! (2020年3月31日 14時) (レス) id: 8e8ba22e4c (このIDを非表示/違反報告)
ひつじマイケル(プロフ) - お疲れ様です!読んでいてとても面白かったです!よろしければこれの短編集を読んでみたいです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 37a32601d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年2月29日 20時