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「その人、何処にいるか知ってるかァ?」
逸るような気持ちを必死に抑える。
餓鬼は、こっくりと頷いた。
「知ってる。じぃちゃんのとこ、運ばれた…………酷い怪我だったんだ」
「!」
怪我と聞いて、心臓がドク……と跳ねた。
「…………其処まで、連れていけェ」
「え?うん、いいよ!」
餓鬼は俺の腕からピョンと飛び出すと、タタタ……と、走っていく。
最初は跡を追うようにしていたものの、俺にとっては遅く感じてしまい、また先程のように抱き上げると
「道案内しろやァ……お前ェは俺が連れてくからよォ」
「わかった!」
全速力で走る。
「わわっ!お兄ちゃん速いね!風みたい!」
「…………そうかよ」
餓鬼ってのは、やっぱり扱いにくい。
なんとも言えぬ気分になって、話をそらす。
「……その、ジィチャンってのは、お前ェのかァ?」
「うぅん、前にも怪物に襲われたことのある、近所のじぃちゃん」
「前にも…………」
「うん、そのときも、なんて言ったっけ……忘れちゃったけど、お兄さんみたいな人に助けてもらったって……あ!ここ!」
餓鬼と話をしているうちに、Aさんがいるかもしれない場所に着いたらしい。
古いが、立派な建物だ。案の定、藤の花の家紋が、暖簾に貼り付いている。
「じぃちゃん!鴉、いたよ!あ、あと、ここを探してる兄ちゃんがいて、連れてきた!_____」
パタパタと屋敷の中へ駆けていく餓鬼。それを呆けて見ていると、女が出迎えに来て
「まぁまぁ、鬼狩り様で御座いますね。どうぞ、御上がり下さいませ」
馬鹿丁寧に案内される。
もう、Aさんのことで、心臓がはち切れそうだった。
どうか無事でいてくれ、と願いながら、Aさんの首飾りを握り締める____
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mikitty(プロフ) - 好きです!!!! (2022年12月25日 13時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - やっぱり何回見ても最高だなぁ、ぐへへ(( (2020年12月19日 14時) (レス) id: 4fc468f2f2 (このIDを非表示/違反報告)
柴犬(プロフ) - 素敵な作品ですね...、愛情表現や色気のあるシーンがすごく好きで一気読みしてしまいました。他の作品も読ませて頂きたいのですがパスワードというのはどちらで伺えばいいのでしょうか...? (2020年5月30日 9時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ohagi - めっちゃ最高でした。自分も腐ってるのでBLの方がよけい萌えました! (2020年3月31日 14時) (レス) id: 8e8ba22e4c (このIDを非表示/違反報告)
ひつじマイケル(プロフ) - お疲れ様です!読んでいてとても面白かったです!よろしければこれの短編集を読んでみたいです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 37a32601d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年2月29日 20時